第18章 家族
その夜の夕食後、携帯を見ていた雅治は、はあ、とため息をつくと、テーブルのタバコを一つ咥え、ベランダに出た。
片付けと洗い物を済ませ、テーブルを拭き上げていると、部屋に戻ってぐったりとソファに倒れ込む雅治。
「繭結〜」
ソファに顔を埋め、来い来い、とする手に、どうかしましたか?と歩み寄る。
「落としますよ」
彼の指に引っかかるように持たれている携帯をローテーブルに置く。
「おんし、本気で俺と結婚せんか?」
ソファに頬をつけて上目遣いの雅治。
「どうしました?
お見合いでも持ちかけられましたか?」
「よお、わかったのぉ」
「え?本当に?」
「ん」
指差されたローテーブル上の雅治の携帯。
「見ていいんですか?」
「ん、」
もぞもぞと動いた手が、ふわふわとした白銀の髪を撫でる手をグイグイと引き寄せ、ソファになだれ込むように腰掛けると、膝に乗る雅治の頭。
置かれていた携帯を手にすると、メッセージアプリが起動されていた。
-ちぐさに聞きました。
彼女さんにはいつ会えますか?-
『母』からのメッセージに、あら、と声を漏らす。
「ご挨拶位は、しておくべきでしょうか?」
ちぐささんはお姉様でしたよね、と携帯をローテーブルに置く。
「そがな簡単に、親に会うていいが?」
「え?うーん、まあ、学生のお付き合いじゃないんだしねぇ」
「よう考えんしゃい。
三十路の長男坊の親と顔、合わす。
ただ、『はじめまして、こんにちは』で終わると思わんがええ」
「あの、ぶっちゃけてもいいです?」
膝に寝ていた雅治を起こし、ソファに上で正座して向き合う。
「私、雅治さんとなら結婚してもいいかなって思い始めてます」
ぱちり、と瞬いたアイス・ブルーの瞳。
「今の私たちって、『結婚前提にお付き合いしましょう』というステージの恋人同士、なんですよね?」
「そうじゃな」
どこか照れたように鼻先を触る雅治。
「元彼から守るための嘘から始まった関係ですけど、私は、現実にしてもいいと思っています」
違うな、と考えた繭結は、雅治の目をしっかりと見た。
「現実にしたいです」
ソファに足を上げ、立てた片膝についた腕で頭を支える雅治。
「覚悟できたか」
「勢いも、大事かと」
いい判断じゃ、と薄い唇に微笑みを携えた。
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