第16章 気になる過去 ❦
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数日後。
「藤波さん、これは?」
「ええっと、そっちは新居行きなので出してもらって大丈夫です!」
わかった、と柳が段ボールを手に玄関に向かう。
「おーい!こっちはあと乗るの2,3個ってところだぜぃ」
「はーい!
この2つももういいな」
丸井の言葉に、柳が置いて行った2つの段ボールを抱え上げた真田。
「い、いけますかっ!?」
「うむ、このくらいで音を上げていては、立海大付属出身の名が廃る」
「すご...あれ?えーっと、上は炊飯器とかで、下のはなんだっけ?」
「繭結に着せたい下着類ぜよ」
ガレージ行きの荷物を持つ雅治が言う。
「仁王が買ったのか?」
戻ってきた柳に聞かれた雅治は、プリ、と肯定も否定もしない。
「おなごの下着を買うとは...けしからんッ」
「違いますっ!えーっと...あっ日用品っ!
決して下着では無いですっ台所用品!」
「台所だな。わかった」
お願いします、と真田に言って、キッと振り向く繭結。
「暇なら、洗面所のものの整理してくださいっ」
こっちです!と雅治の背中を押して行く。
「おっ、ちょうどよかった。
洗濯機のホース、外れたぜ」
「早いですねっ」
「なに、店の配管に比べたらホース外すだけだからな」
洗濯機の取り外しをしてくれた桑原に、ありがとうございます、と頭を下げる繭結。
ピンポーン、と鳴った呼び鈴に、来たんじゃね?と頭を巻いていたタオルを解いた。
「お疲れーぃ!
飯、作ってきだぜぇ」
キッチン借りるぜー、と両手に紙袋とビニール袋を提げた丸井が上がり込む。
「お疲れさま。
飲み物も買ってきたから、休憩にしようよ」
ちょうどお昼だし、と微笑む幸村に、ありがとうございます、と風呂場へと向かった。
「丸井さんたちが来られたので、少しひと休みしませんか?」
「む、そうするか」
「すみません、何から何まで...」
「気にするな。慣れている」
「真田さん、引っ越しのアルバイトでもされていたんですか?」
「いや、アルバイトはしていない。
テニス部で一人暮らしをする奴や転居する奴がいると、こうして集まって手伝うのが習慣になっている」
「卒業しても声を掛け合えるって、いいですね」
素敵です、と笑った繭結に、真田は言った。