第15章 覚悟の時
「突然変異?」
ああ、と頷く雅治。
「3親等内に碧眼はおらんはずじゃが、俺ととし...弟だけ目が碧く、姉貴はよくある茶色じゃ」
「髪も?」
「姉貴はここまで色素は抜けとらんが、昔からシルバー混じりのグレージュんごた色しとる。
トシはよくある茶色ぜよ」
「雅治さんだけ、特別色素が薄い?」
「ごたぁある。
まあ、じいさんは記憶の限り髪は白かったが、俺が生まれた時にはもうじいさんじゃったからな。
昔からこがに白かったかは知らん」
「老化とは話が違うような...」
不思議ー、と雅治の襟足の長い髪の毛先に触れた。
✜
どっちが先に上るかで一悶着を起こした後、じゃんけんで勝った雅治を先に上がらせ、そろそろいいかな、と浴室の扉を開ける。
「っいるならいるって言って!」
脱衣所にタオルを被って座り込んでいた雅治に、バタン!と扉を閉める。
「すまんな、もうしばらく待ちなんせ」
どこか息苦しそうな声に、扉を僅かに開けた。
「大丈夫?」
「なに、普段せん長風呂したき、立ち眩みしとるだけぜよ」
ふう、と顔を上げた雅治の頬が薄紅い。
「も、もしかして、お湯熱すぎた?」
「気にしなさんな。
普段はシャワーで済ますからな
ちぃと、湯あたりでもしたんじゃろう」
立ち上がったかと思うと、フラ、とした身体に雅治の腕を掴む。
「っ危ない!」
「っと、」
狭い脱衣所の壁に片腕を着いて、すまんな、とそのまま座り込んだ。
「ちょ、ちょっと待ってて!
お水、持ってくるから」
「すまんの」
身体に当てていたタオルを巻こうとしたが、めんどくさいや、と放り出し、借りるね、雅治が脱いだTシャツをパフッと着込んでキッチンに駆ける。
干しかごのマグを掴んで蛇口から水を汲むと、風呂場に駆け戻った。
「おお、悪いな」
「飲める?」
ん、と頷く雅治にマグを渡す。
「ごめん、長話したから」
「なに言うとる。
繭結んせいじゃなか」
「でも、」
「俺が勝手に入って、居座っただけぜよ」
大丈夫じゃ、と笑った雅治。
「そこまでやわ無かぜよ。
水、ありがとな」
「無理してない?」
「する必要がなか」
頬の赤みが引いた雅治の顔に、よかった、と安堵した。