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カクテルとキャラメル・ラ・テ

第15章 覚悟の時



なんとか無理くり大人二人で入る浴槽に余裕は無い。

(色白だけど筋肉質だな)

浴槽の淵に掛けられている腕には、筋肉の筋が見えている。

(手も筋が出てて...指、細いなぁ)

そう言えば左利きだった、と視界に入る腕と手に意識を集める。


「繭結、」
「っはいっ」
「こっち見んしゃい」

少し顔を向けて雅治の顔を見る。

「すっぴん、かわいいの」
「っみ、見るなっ」

今さらだとわかっていても、やはり、恥ずかしい。

「お、男の人っていいよねっ
 隠さなかきゃいけないもの、少ないし...」
「最近は化粧する男もおる」
「そうだけどっ」

そうじゃなくて、とモゴモゴと俯く。

すり、と頬を撫でる指。

「ほっぺた、ピンクになっとるぜよ」
「お風呂、入ってる、から」
「温まったかのぉ?」

うん、と頷くと、上るか?と聞かれる。

(あ、がる、けど...)

ちら、と雅治に視線を向ける。

濡れて首筋に張り付く長い灰銀色の髪。

首筋の短い髪の先からポタ、と落ちた雫が、胸鎖乳突筋の窪みに沿って流れていく。


(エロ...ってこらっ!)
違う違う違うっ!と頭を横に振る。

「なんじゃ?どがんした?」

頭、ふれるぜよ、とその頭を捕まえた手に引き寄せられる。

「いえ、ちょっと己の邪心を振り払おうかと...」
「何を言うとる?」
「お気になさらず...」

ポン、と指先で軽く叩くように抱えられた頭に、キスが落ちてくる。

座ったって20cmの身長差が縮まらない。

少し顔を上げて雅治の顔を見る。

(あ、れ?)
うん?と顔を寄せる。

「なんぜよ?」
「雅治さん、瞳、青い...?」
「なんじゃ、今さら」
「え?でも、黒?茶?だったよ、ね?」
「この世にはカラコン言うシャレたもんがあるぜよ」
「いや、わかるけど...
 ん?じゃあ今もカラコン?」
「いや、なんもつけとらん」
「...え、じゃあ、青い目が裸眼?」
「そうぜよ」
「嘘っ青がカラコンだと思ってたっ!」

見せて〜と向かい合って雅治の頬に触れる。

「ロシアのアラスカ民族に拉致されたコリアンが」
「違うよ、東京と四国のクォーターでしょ。
 えーっと...マイケル、あ、あ、アルデヒド?」
「シックハウス症候群になるぜよ」

なんだったっけ?と笑う繭結は、いいなぁ、とその瞳を見た。

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