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カクテルとキャラメル・ラ・テ

第15章 覚悟の時



「はぁああ」

ちゃぷ、と両手に掬ったお湯が溢れていく。

「絶対女の子からもらってるよ、あれ」

なんで聞いちゃったんだろうっ!と掬ったお湯で勢いよく顔を洗う。

「いや、元カノのひと...10人や20人はいそうたけど」
20人は言いすぎか、と考えたが、いや無くはない、と考え直す。

「中学生で付き合う人もいるし。
 それこそ、中1...13歳くらいから彼女がいたとすれば雅治さんが今30...じゃなかった29歳だから〜16年間あれば10人はいるでしょうっ!
 20人いたら驚きはするけどあり得そう...
 3ヶ月とか半年で別れてたら、軽く10人は超えるって」

あり得る、あり得る、と言い聞かせた。

「繭結」
「っはいっ」

すりガラス越しの影に、雅治さん?と問いかける。

「入ってええが?」
「っすいませんっすぐに上がりますっ!」
「そうじゃなか」
「え?」

ちゃぷ、と立ち上がった体に纏ったお湯が揺れる。

すりガラス越しの影が動くのがわかり、まさか、と固まる。

(一緒に、ってこと...?)

ガチャ、と開いた扉にあ、あのっ!と、声を上げて浴槽に座り込む。

「えっと...た、タ、タオルっをくだっさい」
「...小さかのでええが?」
「ばっバスタオルっ」
「...これでええが?」

扉の隙間から差し出されたスポーツタオルサイズのそれを受け取り、ま、待ってくださいね、とワタワタと体に巻く。

「寒か」
「すいませんっお待たせしましたっ!大丈夫ですっ」

ザブン、とお湯に浸かって早口に言うと、ペンギンのように足を折ったまま、ちょこちょこと扉に背を向ける。

「湯、冷めしもうとらんか」

かた、と風呂椅子を動かす音が背後して、空けた湯船から洗面器がお湯を掬い取る。

ザァ、と何度が湯が流れる音がして、入れてくれ、と言われ、ど、どうぞ、と端に寄る。


「狭かろう」
「あ、上がりますから」

ちょこちょこと端に寄って、体に巻いたタオルを押さえながら立ち上がろうとする腕を掴まれた。

「うっ」
「嫌、か?」

感情がわかりにくい瞳に、うっ、と、固まる。

「嫌なら、あがりんしゃい」

そう言って離された手。

「...いつも、ズルいんですね」

ちゃぷ、と湯に浸かると、来んしゃい、と今度は優しく腕を引かれた。

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