第15章 覚悟の時
現場見ましょうか?と案内されたのは、中央区日本橋の部屋。
「先輩が気にされてた防犯面ですが、鍵はオートロック。
カメラインターホンには録画機能があり、玄関横に宅配ボックスあります。
警備員常駐では無いですが、エントランス、エレベータなど共有部分はカメラによる遠隔監視が24時間されており、万全かと」
「鍵、シリンダーキーじゃったな」
「今、入室済みの部屋から電子錠への変更工事してますから、ご契約からご入居までに交換させます」
「前ん住人が出て行ったん、いつじゃ?」
「えーっと...それは言えないんですけど、ここの空き情報を公開したのが3カ月前、と伝えれば先輩なら分かりますよね?」
広い、と部屋を見て回る繭結。
「ここに来る道の途中、角を曲がる前に交番があったじゃろう。
常駐か?」
「確かではないですが、常に誰かいそうな感じではあります。
確認しておきますね」
「警備会社、どこじゃ?」
「ここは...東中セキュリティです」
ふむ、と考える雅治。
「雅治さんっ」
なんじゃ、と嬉しそうに駆け寄る繭結を見る。
「お風呂、めっちゃ広かったです!」
「...よかったのぉ」
「雅治さんでも足伸ばして入れそうでしたっ」
「...ん、」
「洗面所も広かったし、ここも鏡面収納付きだったから、お化粧品もたくさんしまえそうですよ」
「...おんし、なんのために越すか、忘れちょらんか?」
「はい?」
「いや、よか。
どかんずる?ここに決めるか?」
「十分すぎるくらいですっ」
他に見なくていいですか?と聞く後輩に、ここにする、と不動産屋に戻った。
机に用意される契約書に、えっと、とペンを持った繭結の手から引き抜く。
「え?」
「書きすすめとくぜよ」
「あっ、お願いしまーす」
資料集めをしている担当に声をかけた雅治が書類に書き始める。
契約者、に自身の名前を書く雅治に、なんで、と顔を見る。
「住所不定無職、貯蓄無し、新潟の田舎娘に貸す家主はそうそうおらんぜよ」
「っ八丈島ですー!新潟はおじいちゃんちだもんっ
それに、まだ住所不定じゃないもんっ」
「片足突っ込んどるようなもんじゃろう」
「っく」
言い返せないっ、と項垂れる。
「契約者、先輩ですか?」
「いずれは住む」
ちょっと待ってくださいね、と何かを確認し始めた。