第15章 覚悟の時
「こちらどうですかね?
江東区2DK。角部屋南向き。5階建てです」
「江東区かぁ...5階...エレベータは?」
「無いです」
うーん、と悩んでいると、書類を覗き込む雅治。
「オートロックも要件に足してケロ」
「オートロックですねぇ」
雅治の大学の後輩という不動産の担当は、んーっと、とパソコンを触る。
「仁王さん、魚飼ってましたっけ?」
「うんにゃ」
あれ?とパソコンからこちらに視線を向ける。
「水槽、結構大きいの持ってません?」
「魚は入れとらんぜよ。
水草だけじゃ」
「そうなんですねぇ。
部屋って、それぞれに個室が欲しい感じですか?」
顔を見合わせた繭結と雅治。
「服とか荷物が、置ければ、いいので
個室っていう部屋は要らない、かな?」
「あればあるに越したことはなかが、パソコンと水槽が置ければいいくらいかの」
「なるほど。
こちら、どうですか?
オートロック、防犯カメラ、TVインターホン付きです」
角部屋なのでちょっと作りが独特ですが、と渡された資料。
「LDが9.6畳あるので、2人でも十分かと。
こっちの6.6畳の部屋は、収納が物入れとウォークインクローゼット、こっちにも同じ容量の物入れがあるので、収納スペースがしっかりあります。
そうしっかりとそれぞれのスペースを分けなくていいのであれば、充分な容量です。」
ふむ、と資料を見る繭結。
「ここ、何階がか?」
「6階です。エレベータあり。
管理費込みで21万。
駐車場付き、24時間ゴミ出しできます」
「前の部屋の倍...」
うわあ、と言う繭結の頭に雅治の手が乗る。
「半値で考えんしゃい。
家におる時間を考えたら俺の方が長くなるき」
「10万ちょっと?」
今とそう変わらないな、とこぼす繭結。
「駐車場も使うんは俺じゃけの。
条件もほとんど俺の希望じゃから、家賃はいらんと言いたいが、それじゃあおんし、納得せんじゃろう。
ここが気に入ったなら、今と同額でいいぜよ」
「えっ!?」
「そんかわり、俺に飯ばつくっちゃり。
それでちゃらぜよ」
そんな、と俯く繭結。
「お二人、結婚は?」
「こっちの決心がつき次第じゃな」
手強い相手でのぉ、と手で頭をポフポフと叩く雅治の視線に気づきつつ、資料を手に取った。
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