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カクテルとキャラメル・ラ・テ

第14章 新たな脅威


マユちゃん、と呆然としているはづき。

「ごめんなさい。
 もう、関わりたく無いです」
「でもっ」

ごめん、と駆け出すと、ドンッと固くはないものにぶつかった。

「『いや』と言うとるおなごを無理やり手籠めるのがやり口らしいの、おんしらは」

低い声に、ギュッ、と、肩を抱かれ、嗅ぎ慣れたタバコの香りが混ざる香水に、見上げる。
赤い髪の彼は、丸っこい目ではづきを睨んでいた。

「元彼の妹か。
 なんの用ぜよ」

丸井の顔から発せられる雅治の声に、なんで、と繭結は困惑する。

「ちと丸井をからかってきたからのぉ。
 繭結が歩いとるのを見つけて車を停めたら、妙のに絡まれとったでな」
「マユちゃん、誰?」
「婚約者ぜよ。
 嫁に用があるなら、俺が聞くき、俺に話しんしゃい」

腕に隠すように繭結を抱き寄せ、葉月を睨む雅治。

「もう新しい彼がいるの?」
え?と葉月は腕を組んだ。

「なんの問題があるが」
「いや、おかしいでしょ
 まだ別れてそんな経ってないよね?
 え?まさか浮気っ?」
「っ違うっ」

雅治の腕を振り払った繭結。

「別れようって合鍵を置いていったのは慶太の方よ」
「え?」
怪訝そうにしたはづきに、繭結は続けた。
「私はっそれでいいって彼に連絡しなかった!
 関係はとっくに破綻してたっ
 なのにっその後のことをっ慶太やはづきに何か言われる筋合いはないっ」

深く息を吐き、はづきをきつく見る。

「別れたくなかったなら、そう言えばよかったじゃない!
 でも、もう遅いっ
 私はっ雅治さんが好きだから、雅治さんと歩む道を選んだっ
 それより前に関係が破綻した慶太に、はづきに何を言われても、私は戻らないっ
 関わりたくないの、二度とっ」

責めるなら責めればいい、と背筋を伸ばす。

「私は、羽の一つが落ちかけていても飛ぶ。
 3枚あれば、飛べる蜻蛉だから。
 その行き先を、誰にも決めさせない。
 捕まえるというなら捕まえてご覧なさいよ。
 2枚になったって、羽を失くしたって私は進む。
 蜻蛉には、脚だってあるんだからっ」

ふぅ、と一気に話して息をつくと、ポン、と頭に置かれた手。

「捕まえたぜよ。
 『3枚羽のトンボ』ちゃん」

雅治は柔らかに笑っていた。

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