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カクテルとキャラメル・ラ・テ

第3章 仁王 雅治



「偽造?」
「法を犯すのはモットーに反するぜよ」

本物か、とテーブルにある運転免許証を手に取った。

「におう...まさ、はる?」
「正解じゃ」
三億点やろう、と言われ、何のためのポイントなんだろうか、と免許を返す。

「29歳、ですか」
「なんじゃ?」
んん?と手をついてこちらに詰めてくる彼を、いえ、と手で押し返す。

「お、お若く、見えたのでっ」
「素直に言いんしゃい」
「...年齢があることに驚いてしまった自分に驚いています」
「ややこしい答え方じゃのぉ」

おかしそうに喉の奥で笑うと、煙草を咥えた。
オイルライターで火を付ける仕草が様になるなぁ、と見ていた。

不意に動いた彼の胸もとが目の前まで迫り、ほのかに男物の香水の匂いがした。

元の位置に戻った彼の手には、ガラスの器。
口に咥えていた煙草を、その上で、とん、と指で叩いた。

「煙草、お似合いですね」

フー、と細く紫煙を吐き出すと、ガラスの器にネジ潰す。

「それはあれか?
 『月が綺麗ですね』と似たように捉えてええんかの?」
「夏目漱石?」
「博識じゃな」
「常識かと」
「常識なぁ
 で、マユ、どうするんじゃ、あん男」
「どうしましょうかねぇ」

考えるのもめんどくさいな、と適当に返事をすると卓上の携帯が鳴った。

 -はづき-

顔を顰めたマユに気づいた雅治は、誰じゃ?と肩口に顎を乗せてきた。

「...彼の妹。
 連絡つかなくなったから、かけさせてるんだと思う」
「仲がええのか?」
「うちのビルでアルバイトしてて。
 たまに3人でご飯食べたりする」

呼び出しが止まると、今度はメッセージが届いた。

差出人は「ケータ」。

 -どこに行ったの?
  帰っておいで-

「DV男みたいなメッセージじゃ」

ククッ、と喉の奥で笑った雅治。

再び、彼の妹から着信が入った。

「マユ」
「繭結よ。藤波 繭結」

無言で、手を振って促す彼。

一度、画面を見た後に、筋張った節の目立つ手に運命を預けてみることにした。

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