第14章 新たな脅威
そういえば、と片付けをしながら雅治に声を掛ける。
「料理、作った方がいいですか?」
うん?と洗い物の様子を見ていた雅治。
「お部屋決まるまでお邪魔させて頂く訳ですけど、しばらくはプー太郎なので、雅治さんがいいのなら、お食事の用意くらいはしようかと」
いつも外食で済ませているんでしょう?と食器を洗う。
「それは、嫁さんになる覚悟ができたと捉えていいがか?」
「違います」
即答した繭結。
「雅治さんが負担にならないなら、作りますよ。
多少の蓄えはあるんだし、食費くらいは持たせてください」
「愛妻弁当が欲しいナリ」
「愛妻がいない人が何を言ってるんですか?」
「席の予約は済んどるぜよ」
繭結専用じゃき、と笑う雅治。
「ていうか、お弁当欲しいんですか?」
「恋人と言えばじゃろう」
ちょっと意外だな、と思う。
「飯、うまかったからな」
「それは、ありがとうございます」
「照れとるが?」
「べっつにぃ?」
スポンジを置いて、食器のすすぎに取り掛かる繭結。
「にやけちゅうぜよ」
「っ違うもん!」
「ほんに、おまんはかわいかのぉ」
くしゃ、と髪を撫でると、タバコを咥えてベランダに出た。
洗い物を終えると、ふと考える。
(雅治さんは、「婚約者」と言ったけど付き合ってる...のか?)
私たち、と今さら疑問が浮かんでくる。
(たぶん、ケータから守るために雅治さんは、『付き合ってることにしよう』としたわけで...
恋人よりも婚約者の方が、それらしいからって...
それらしいってなんだ?
それに、もうケータから守ってもらう必要はないわけで...)
不運と偶然が重なり合って今に至る。
(彼は恋人で、本当に婚約してると勘違いしてない?私)
理由がなくなってしまったのに、と、ガラス越しに煙草を吸う雅治を見る胸がギュッと痛んだ。
(忍足先生と話して、私の気持ちは整理したけど...)
あなたは...?と俯く。
(それに、慶太だって...)
今は、勝手にこちらが距離を取っているだけだ。
彼は、納得はしていないのだから。
(どうしたら、いいのっ)
がくり、と、膝を折り、きつく目を閉じた。
✜