第13章 新生活
「えー」
「なんじゃその声は」
昼食をコンビニ調達か店か、と言った繭結に「手料理に飢えとる」と答えた雅治。
「料理できんがか?」
「できなくはないですけど、」
「じゃろうなぁ。
ちゃんと使われとるキッチンじゃった」
「よく見てますね。
でも大した物作れません」
「大した料理とはなんぜよ?」
そこ突っ込まれるとちょっと...と考える。
「なんでもいい。
繭結の飯が食うてみたい」
「...うちで作ってもいいですか?
勝手がわかってるので」
「いいぜよ」
なら早速、と上着をと車のキーを手にする。
「しまった。
数日冷蔵庫を確認してないな」
「できるだけ消費しときなせぇ」
「ですよね。何があったかなぁ?
傷ませてるもの、無いといいけど...」
ミカンの二の舞はごめんだ、と小さく震えた。
✜
「雅治さんのおうち、調味料ってあります?」
「ほとんど無いのぉ」
「しょうゆは?」
「弁当についとるやつがあるからのぉ」
「砂糖、塩」
「コーヒーはブラック派じゃ。
塩...あ、こんくらいの瓶のがあるかもしらん」
卓上塩くらいの幅を指で示す雅治。
「調理器具は?」
「...シェーカー」
「いや、お酒用!調理器具ではないっ
あっレンジ!電子レンジはありますよね?」
「無いぜよ。
弁当はコンビニで温めてもらう」
「おっふ」
まじか、と考え込む繭結。
「できるだけ貯金減らしたくないんだよなぁ...
毎食、中食外食...?うーん、一日食費いくらになるかな」
「すぐ持ってこれるもんなら、持ってきなんせ」
「え?」
「レンジでもフライパンでも業務用冷凍庫でも。
使わんもんはガレージに入れとくぜよ」
「がれーじ?」
そんなものあったか?と部屋の様子を思い出す。
「駐車場の一角が貸しガレージになっとるじゃろう。
一室につき一区画使えるようになっとる。
スペアのタイヤと...折りたたみ自転車ぐらいしか置いとらんから、家財類はそこに置けばいいぜよ」
「いやいやっ!そこまでしてもらわなくてもっ」
すぐに部屋、見つけますから!と手を振る繭結。
「おんしはまっことにアホじゃのぉ。
好いた女ば、己に依存させたい男の欲を理解しなっせ」
「え、怖っ」
「養っちゃるぜよ?」
遠慮シマス、と、そう広くは無い車内で身を引いた。