第13章 新生活
「ただいまデース」
三和土のスニーカーはここを出た時と寸分変わっておらず、出かけなかったのかな?と部屋に入る。
「おお、おかえんしゃい」
お疲れしゃん、とローテーブルに開いたパソコンを見ていた雅治が言う。
「今日は在宅だったんですね」
「基本テレワークぜよ」
「超インドア派そうですもんね」
玄関の壁のハンガー掛けに上着をかけ、ちょうどお昼ですね、と洗面所で手を洗う。
「お昼って食べました?」
朝、自分が出かける直前まで寝ていた雅治は、寝巻きのまま。
「朝も昼も食うとらんぜよ」
「朝食べないって言ってましたもんねぇ」
お腹すいてます?」
「繭結が食いたい」
「スーパー、コンビニ、ドラストあたりで買えるものでお願いします」
「おんし、スルーするようになったのぉ」
「繭結はスルースキルを手に入れたっ!」
テッテレー♪と洗った手を挙げた繭結。
「テンション高いの」
「1件、採用面接の予約取ってきました!
あっ、そうだ、ご相談が」
なんぜよ?とローテーブルに座る雅治の隣に正座する。
「あの、ネット環境と可能であればパソコンかタブレットを拝借できないでしょうか」
お願いします、と手をつく。
「お給料が入りましたら、即刻購入しますのでっ!」
ネット料金も負担します!と下げかけた頭は、両頬を片手で掴んだ雅治に阻まれる。
「っくく。
おもしろい顔になっとるぜよ」
「ひちゅれーなっ!」
むにむにと繭結の頬を弄ぶ雅治の手。
「遠慮しなさんな。
今後はここがおんしの家じゃき、好きにしとぉせ」
「あひがとぉごらいまふ」
「おんし、パソコンはどのレベルで扱えるが?」
「えーっと、電源ボタン押す、ログインする、アイコンクリックする、キーボードで打つくらいしか」
「それらができればええが?」
「ネット環境下でそれができれば...」
わかった、と立ち上がった雅治は、ロフト下の収納を開けていそいそと大きめの箱を取り出した。
「余りもんじゃから、ちと古いがのぉ」
そう言って開けた薄い段ボールには、ノートパソコン。
「壊れてるんですか?」
「いや、物が古い言うだけぜよ。
中をいじればスペックは問題ないはずじゃ」
「なかを、いじる...?」
「いやらしい意味と違うぜよ?」
ニヤ、と笑った雅治に、サイテー、と目を細めた。
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