第13章 新生活
「髪の色かなぁ?」
ヒョロ、と長い茎の先に白い小さな花が集まって咲いている姿はそれっぽいかも?と、ハナウドの画像から説明画面に飛ぶ。
「『光線系の毒素を含む』...
樹液のついた部分が日光で荒れる...
うーん、陽の光と相性が良くないというのは何となく分かるかも」
日光より月光の方が似合うもんな、と割と的確な喩えをした華都葵に驚く。
溜まっていた有給があってよかった、と昼前のオフィス街を歩く。
「もうこの辺りを歩くことは、ないかなぁ」
丸の内OL人生が終わる、と考え、はたと気づく。
「早く仕事、探さなきゃ」
しばらくは雅治の部屋に世話になるとしても、自分の食い扶持は確保しなければならない。
「仕事決めて、家見つけて、生活を安定させる。よしっ」
まずは職探し。
あと2カ月は住所があるのだから、と求人誌を求めてコンビニに立ち寄った。
「受信コールセンタースタッフ。時給1,500円か」
電話対応は割と得意だ、と印を付ける。
「製品管理サポート事務...北区っ世田谷区から遠いなぁ...って、違う違う」
世田谷に住む体でいるじゃないか、と気持ちを切り替える。
「逆に考えよう。
住処はどうにでもなる。する。
どこに住むかを決めるために、どこで働くか決めたらいい」
よし、と気合を入れなおして、求人誌を捲った。
✜
「はい、では10時半に伺います。
ナカムラ様ですね。かしこまりました。
よろしくお願いします。はい、はい。
お忙しい中、ご対応ありがとうございました。
はい、失礼させていただきます」
手帳に面接日と時間をメモする。
「んー、最寄りは北参道だな」
副都心線かぁ、と求人誌を巡りながら居住候補地区も絞っていく。
「お、履歴書不要...」
即日採用、当日払い、とある求人は、申請書類の審査スタッフ。
携帯ひとつ、パソコンひとつで在宅ワーク可能!と言う言葉に目を留める。
「申請書等の審査業務...」
携帯でできるならいいかも、と詳細を見る。
「ネット環境かぁ...
あ、でも、雅治さんの部屋、ノパソもデスクトップもあったよね」
さすがにパソコンを借りるのは憚れるが、4万に多少上乗せするのでネット環境を使わせてもらえないだろうか、と推考した。
✜