第12章 勃発
(ケータ、どうなるんだろう)
自宅へ帰宅後。
俺は済ましとるけ、と、雅治を部屋に残して入浴した後、脱衣所で携帯を手にする。
「暴行罪...」
留置、送致、取調、とドラマの名でしか聞いてこなかった単語がずらずらと並ぶ。
「比較的軽微...
非親告罪...
逮捕はされない。被害届が出ていない時は処罰を下さないこともある、か」
逮捕はされないだろう、と忍足医師は言っていたが、会社の目の前で警察に連行されているのだ。
数日で、はい日常、とはならないだろう。
「なんで、」
はぁ、としゃがみ込んで俯く。
あの時、『別れたくない』とさえ言っておけば、こうはならなかったのだろうか。
慶太の言葉を鵜呑みにして、身を引いてしまったのが原因だろうか。
コンコン、と打たれた扉に、ハッとして顔を上げる。
「繭結、生きちゅうが?」
「っい、生きてますっ!」
「溺れちゅうわけと違うか?」
「溺れてないですっ大丈夫!」
つ、と頬に伝った涙を指先で拭って立ち上がる。
「痛った!」
「っ繭結!?
開けるぜよっ!」
タオルハンガーの端にぶつけた頭を抑えながら、待って、と扉に手を伸ばすが遅かった。
見せんしゃい、と打撲部を抑えていた手をのけられる。
赤うなっとる、と触れられ、痛っ、と手を払う。
「おんし、見た目と違ってドジなんか?
チビのくせによぉ頭ばぶつけんしゃるね」
「う、うるさいなっ!」
どうせチビだよ!と座り込む自分の向いにしゃがみ込んだ雅治を睨み上げた。
「ほんっと、もう最悪っ
なんなの!?厄年?厄日?」
「氷川神社でお祓いでもしてもらうかの」
「氷川神社...どこ...?」
「俺ん部屋から30分くらい歩いたところにあるぜよ」
「等々力、遠いぃ!
行くまでに厄も次に行くよっ」
「繭結、」
「なにっ!?」
パンクしそうな頭に、半分、投げやりに返事をした。
「忍足もああ言うとった。
おんし、本気で俺と住まんか?」
どこか眠そうな印象が強いアイス・ブルーの瞳が、まっすぐに見ていた。
「職場、遠い」
「送る。迎えも行く。
じゃが、早いうちに転職してほしいぜよ」
「...雅治さんは、それでいいの?」
「好いたおなごが頼ってくれる言うんは、男には本望ぜよ」
差し出された両手の中に飛び込んだ。