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カクテルとキャラメル・ラ・テ

第10章 Fake?



「すみません、個人的な事を...」
「聞いたのは私だから」

そうだったのね、と鷹司は頷いた。

「確認だけど、藤波さん、大迫君とは別れたという認識で、間違いないわね?」
「はい」
「再度、交際する意思は無いのね?」
「...はい、ありません」
「それって、つい最近のこと?」
「先週のこと、です」
「踏み込んだことを聞いていいかしら?」
「はい、」

鷹司は、植え込み沿いのベンチから少し離れた所で煙草を吸っている雅治を見た。

「彼、本業は?」
「建築士をしていると」
「建築士...」

そ、と雅治に視線を移した鷹司の表情に、あっ!と鞄を漁る。

「嘘ではないと、思います」

定期入れに入れていた雅治の名刺を渡す。

事務所名と氏名。
裏に記載された「一級建築士・木造建築士・建築設備士 資格有り」に、へえ、と零す。

「割と大きなところにいるのね。
 木造建築士なんて珍しい。
 若そうなのに」

返された名刺をしまう。

「まとめると、大迫君は本当は別れる気は無く、あなたの気持ちを確かめたくて別れを切り出した。
 対して、藤波さんは突然の別れに驚きはしたものの、冷静になって考えたら彼との交際に意義は見いだせず、関係を続ける必要は無いと判断した。
 そんなあなたの前に現れた彼...仁王さん?に、結婚前提で付き合わないか、と言われ、まあそれもありかな、と承諾。
 だって、この時はあなたはフリーだものね。
 心機一転、新しい恋に、と踏み出したあなたに、別れを切り出したはずの大迫君が未練たらたら、と」

なるほど、と言った鷹司。

「確認だけど、あなたの気持ちはどこにあるの?」

煙草を咥え、上を見上げていた雅治に、鳩を追いかけていた子どもがぶつかった。

慌てて駆け寄った母親が、ひっきりなしに頭を下げている。
立ち上がった子どもの目線に合わせてしゃがんだ雅治の手元を覗き込む子どもが、パッと笑った。
会釈する母親に手を引かれながら、ありがとー!と笑いかけている子どもの手には、折り紙らしきもの。

「みてー!ヒヨコ」
「お兄さん、上手だったね」

ねー!と立体的な折り紙のヒヨコを嬉しそうに持つ子ども。


「私は、雅治さんが好きです」

追い回されていた鳩に、どこに持っていたのか、米菓子をやっている雅治を見た。

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