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カクテルとキャラメル・ラ・テ

第10章 Fake?



見上げた雅治は、鋭い目つきで、きさん、と低く言った。

「まだうろついとったが」

肩を抱き寄せた雅治の低い声は、昼時のオフィス街によく響いた。

「身ぃ引け、言うたはずぜよ」
「俺はっ諦めないっ」
「...簡単に言いなさんな。
 諦めん言うんは、まだ策のある人間が使う言葉ぜよ」

睨み合う2人に、昼休み時のオフィス街の視線が刺さる。


「大迫君?」

なにをしているの?と怪訝そうに近寄ってきたのは、ベージュカラーのスーツで、低い位置で髪を一纏めにした女性。

「っ鷹司課長」
「なんの騒ぎ?」

対峙する雅治と慶太を順に見た鷹司は、すみません、と雅治に向かった。

「彼の上司で、鷹司と申します。
 部下に何か?」

凛とした態度の鷹司を見た雅治は、ふん、と鼻で笑った。

「大変ですね、管理職というのは。
 部下の個人的な男女のいざこざを解決してくださるのが、御社の売りですか?」

厭味ったらしく言った雅治に、決してそういうわけでは、と鷹司は毅然とした。

「あら?あなた、インフォメーションの...」

雅治のうしろで隠されるようにいた繭結に気付いた鷹司は、3人の様子に、ふむ、と腕を組んだ。

「大迫君、あなたは仕事に戻りなさい。
 休み時間はもう終わっているはずでしょう」
「しかしっ」
「職務専念義務は?
 管理職としての指導です」

有無を言わせない声に、わかりました、と落ち着いた様子の慶太が背を向けた。

ビルに戻る彼を見送った鷹司は、藤波さん、よね?と向き直った。

「座りましょうか」

直ぐ側の植え込みを囲うように設置されているベンチを指した鷹司に、こくり、と頷いた繭結を座らせた雅治。
頭から被った上着を捲ると、落ち着いたか?と伺う。

「ごめんなさい」

頬の涙を指で拭う繭結に、鷹司は首を振った。

「すみません、お騒がせを...」
「あなたが謝ることではないわ。
 けれど、話は聞かせてもらえる?」
「ええっと」

視線を彷徨わせた繭結に、安心して、と鷹司。

「彼の事じゃなくていいわ。
 あなたの事を、あなたの思っている事を聞かせてくれる?
 彼には言わないと、約束する」

一筆書きましょうか?と言った鷹司に、そんなっ!と手を振った。

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