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カクテルとキャラメル・ラ・テ

第10章 Fake?


昼休みになると、駆け足にバックヤードの更衣室に入る。

(どうしよう...)

もう関わりたくはないんだよな、と更衣室で彷徨う。

(時間までここにいようかなぁ)
けど、とお腹に手を当てる。
(お腹すいた、)
どうしよう、と考え込んでいると、制服のポケットに入れた携帯が震える。

「雅治さん...?」

メッセージが来ることはあっても、電話は珍しい。

「もしもし?」
どうしたんだろうか?と耳に当てる。

-おっ、出た。
今、昼休みかの?-
「はい、」
-そうか...な...が-
途切れ途切れの声に、ま、待って、と更衣室から表の方へ向かう。

-#NAME1?#-
「ごめんなさい、地下にいて...」
-時間があるようなら、昼、一緒にどうかと思うてな-
「近くにいるんですか?」
-建物の目の前におるぜよ-
それなら、と顔を上げた。

「いた」
「あ、」
表玄関へと繋がる通用口の目の前で、探したよ?と笑う慶太。

「お昼、一緒に食べようって言ったよね?」
「ぁ...す、すいません、先約が、」
「なら、その人と一緒でもいいよ」
ね?と言う慶太。

-繭結、どがんしたぜよ?-

携帯からの声にハッとする。

「あのっ社外の人、なのでっ」
「そうなの?ねえ、その人ってどんな仕事の人?
 もし...そうだな、設計関係なら、ちょっと会ってみたいんだけど」
「っ!」

笑ってこちらを見た瞳に、ふるふると首を横に振る。

「なら、俺との約束が先だよね?」
「っ約束なんてしていませんのでっ!」

ロビーの奥に繋がる別の通用口を通って、表に出る。

暇そうに受付に立つ澤田の前を通って表玄関を出ると、広場を駆け抜ける。
荷積み用の車寄せにハザードをたいて止まっているロードスターを見つけ、携帯を握りしめて駆け寄る。

「繭結っ」
「っやだっ!」

後ろから腕を掴んだ手を振り払おうとすると、俺ぜよっ!と低い声。

「ま、さ、はる、さん...」
「ああ、まー君ぜよ」
どがんした?と聞く雅治に、溢れた涙が頬を伝う。

「泣いとるがか?」

その頬に雅治が伸ばした指先は、触るなっ!と周囲に響き渡った叫び声によって一瞬止まったが、次には力強くその腕の中に抱き寄せられていた。

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