第9章 ジェネレーションギャップ
ゲーム内でのやり取りに
-了解ですっ!(^_-)-☆-
と返信した雅治は、真顔で笑ってしまう。
「もうちょい待ちんせぃ」
よしよし、と頭を撫でる雅治の顔を見る。
「HARUちゃーん」
「...ちょっと待っててぇ」
ゲーム内の名前で呼ぶと、雅治お得意の「イリュージョン」による可愛らしい声に返事をされた。
「っギャップがすごいっ」
面白い、と足をパタつかせる繭結に、終わったぜよ、と携帯を放り、向き直る雅治。
「女性の声も出せるんですね」
「今のは姉貴ん声じゃ
繭結ん声も、出せんことはないぜよ」
「ほんとに?」
少し咳払いをした雅治。
「ぁ...雅治さーん」
「えー?私ってこんな声?」
それはな、と雅治。
「己の声言うんは、『骨導音』言って骨から体内に響く声と、『気導音』言う、外からの振動で耳に届く声が重なって聞こえるもんじゃから、骨導音の無い他人の耳や、録音された声とは違って聞こえるもんじゃ」
「なるほど〜勉強になりました」
「繭結は素直じゃのぉ」
「えっ?もしかして嘘ですかっ!?」
「だまそうとはしてないぜよ」
本当の話じゃ。と仰向けに寝る雅治の肩に、頭を預けた。
「繭結、携帯、鳴っちょらんか?」
「ん?」
耳を澄ませると、遠くから低い振動音。
布団から出た雅治が持ってきたバッグから携帯を取り出す。
-部屋のもの、いつ取りに行ったらいい?
ケータ-
「あ、忘れてた」
布団に座る繭結を背後から抱いた雅治が、肩に顎を乗せる。
「早いこと清算して、俺んとこに嫁に来るぜよ」
「嫁て...
なんでそんなに結婚、結婚っ...
30歳の焦りですか?」
「29言うとるじゃろう」
こだわりますねぇ、と携帯を弄る繭結。
「ええっと。
近日中に荷造りの上、着払いで送らせていただきますので、えー、ご...『査』収する必要はないよね...
あ、『お受け取りください』。お受け取り、ください」
送信、をタップする。
「あっ」
取り上げられた携帯を追って手を伸ばす。
布団に放られたそれに、まあいいか、と背後の雅治に身を預ける。
「はよ、俺だけのもんになりんせぇ」
「...はい」
包み込む彼の両腕に抱かれ、目を閉じた。
✜