第9章 ジェネレーションギャップ
カーオーディオからの音楽に、知ってる、と繭結がつぶやいた。
「なんだっけ?
ミソソソ、ファラララ...茶色の小瓶は...♪だっけ?」
「もとは、酒場の歌ぜよ。
グレン・ミラー言うミュージシャンが、スウィング・ジャズにアレンジして広まった曲ぜよ」
「雅治さんにジャズって、イメージにぴったりです」
「そうかのぉ」
ほら、と続ける繭結。
「ちょっと怪しい薄暗いバーで、グラス拭きながら『いらっしゃい』って口元だけ笑ってそうです」
「褒めちょらんよな、それ」
「褒めてます、褒めてます」
怪しいのぉ、と横目に見る雅治に笑った繭結が、あ、と漏らす。
「ええっと...
『ムーンライト・セレナーデ』...だったかな?」
「おお、よう知っちょったな」
「『ジャズ』って聞くと、この曲が頭を流れます」
「繭結は、どけな曲を聞くか?」
「J-POPのヒットチャートが多いです。
サビだけはなんとなく歌える、みたいな。
特段、好きなアーティストとかジャンル無くて」
邪道ですかね?と苦笑い。
「そういう人間も多かろう。
特に気に入っとるのがあるなら、聞いてみるか、と思っての」
「すいません、無くて。
んー、じゃあ、雅治さんのお気に入り、教えてください」
「そうじゃな、」
ピピッ、とハンドルのボタンでオーディオを操作すると、ジャズのリズムで奏でられるピアノ。
「『ルパン三世のテーマ』!」
これはわかる!とハミングする繭結。
「ジャズの名曲を聴くのもいいがの。
J-POPや歌謡曲のアレンジも、嫌いじゃないぜよ」
「夜のドライブにはピッタリですね」
「少し、走るかのぉ。
フィアットでもアルファロメオでも無かが」
「?ミニークーパーじゃ無くて?」
「クーパー以外にも出てくるぜよ。
そうじゃな、繭結はさしずめ不二子かクラリスか」
「レベッカかもしれません。
それか、ミレーヌ?」
「レベッカ...?ミレーヌ...?
そげなおなご、出てきたかのぉ?」
「え?TVシリーズでやってましたよ」
「...銭形の声優」
ええっと、と考える繭結とタイミングを合わせる雅治。
「山◯宏◯さん?」「納◯悟◯」
「誰っ!?」
「まー君、ライフポイント0になってしもうたぜよ」
✜