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カクテルとキャラメル・ラ・テ

第8章 彼が彼氏で、貴方は誰がし?



「ごちそうさまでしたっ」
「おう!いつでも来いよ」

おやすみなさい、と店先まで出てきてくれた丸井に別れを告げ、少し先で煙草に火をつけている雅治に駆け寄る。

「そげなヒールで走ったらこけるぜよ」
「平気ですっ!
 今日は、ありがとうございました」
「?いや、今日のは全部、幸村がもっとるき」

料理の代金のことを言う雅治を、それもですが、と見上げる。

「皆さんに会わせてもらえたことです。
 知らない雅治さんがいっぱいで、楽しかったです」
「そら、よかったぜよ」

嬉しそうな笑顔を見せる繭結の手を取る。

「中高大って立海だったんですね。
 建築科ってどんな勉強するんですか?」
「そうじゃのぉ...
 例えば『音楽家の家』言う課題に、自分でコンセプト...『どこにいてもピアノが目に入る』とかな。
 そげなを決めて、図面、模型、パース...グラフィックで立体的に作る図面のことじゃが、そげなんの作り方を学ぶ学科じゃな」
「...へぇ」
「わからんちゃよかぜよ」

煙草を咥えた口元に笑みを携えた雅治。

「でも、せっかくなら知りたいです。
 雅治さんのことなら」


車に乗り込み、煙草を一口を吸うと、シートベルトのバックルを止めようとする繭結の頭を手を回して引き寄せる。

少し、アルコールの香りがする唇に舌先で触れると、僅かに開いた隙間に捩じ込む。

「ん」

ゆっくりと舌先で繭結の舌上を撫ぜる。

「んんっ」

苦しげな声に話した唇から、僅かに上る紫煙。

「っ苦いっ」
「くくっ、お子様には早かったのぉ」

最後に深く一口吸った煙草を携帯灰皿で潰すと、帰るかのぉ、とエンジンをかける。

「ううー、舌がピリピリする」
「はよ慣れんしゃい」
「私も吸えば慣れるかなぁ?」
「やめんしゃい。
 おなごにはよぉないぜよ」
「それは性別関係ないのでは?」
「...煙草、減らしちゃるき吸いなさんな」
「どうして?」
「似合わんぜよ」
「確かに雅治さんは似合う、煙草」

うん、と納得する繭結の手を取って、車を発進させる。

「煙草と酒と女...」
「どこの演歌ぜよ」

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