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カクテルとキャラメル・ラ・テ

第8章 彼が彼氏で、貴方は誰がし?



じゃあ丸井の店で、と「今朝の雅治さん」に言われ、わかった、と頷く2人の雅治さんと、お連れの方。

また後で、と去る姿に三つ子...?と、横を通り過ぎたサラリーマンが不思議そうにしている。

「完璧と思ったんじゃがのぉ」
「結構ちゃんと見てるんですよ?」

心底悔しそうにする雅治本人に、ふふ、と笑う。

「しかし、これで繭結の愛が証明されたき」
「自分で言って恥ずかしくないですか?」
「なにがじゃ?」
「...なんでもありません。
 今回の『イリュージョン』にはなにかテーマが?」
どなたですか?と雅治が指先に引っ掛けているくせっ毛のウィッグを見る。

「さっきの連中も含め、詳しくは丸井の店に向かいながら話すぜよ」

メタリックなグレーのロードスターに頭を突っ込んでいた雅治が、恭しく助手席の扉を開けて手を差し出す。

「どうぞ、プリンセス」
「ずいぶん『暴れ馬』な馬車ですね」

独特のエンジン音を馬の嘶きに例えた繭結に、手綱捌きに酔いしれんせ、と乗り込んだドアを閉めた。


「すまんのぉ。
 ちと、丸井とのやりとりを連中に聞かれてな...
 幸村に言われると断りきれんき」
許しとぉせ、と前を向いたまま右手で髪を撫でる雅治。

「皆さんは...?」
「中学からの同級生じゃ。
 切原、あー、さっきまで俺が変装しとったやつなんじゃが、そいつのところに子どもができてな」
「キリハラさん、」
「こいつはひとつ下の後輩じゃき。
 嫁さんが里帰りしとるから暇じゃとやかましゅうてなぁ
 丸井の店に呼び出してメシを食うとったら、『みんな呼びましょうよ!』と片っ端から声をかけ始めてのぉ」
「プチ同窓会だったんですね」
「なんだかんだとあの店に集まっとるメンツじゃから、久しゅうはないんじゃがな」

代官山に到着すると車を停め、来んしゃい、と助手席のドアを開けて手を差し出す雅治。

「あ、私、格好...」

とろみのあるパールボタンのブラウスを摘む繭結。
白のそれに黒のシンプルなペンシルスカートとページュのヒール。

「いつも通り、かわええぜよ」

ほれ、と今朝のスーツのままの雅治が差し出す手に掴まって車を降りる。

「エスコートはするぜよ」

掴まりんしゃい、と微笑む雅治の腕に、よろしくお願いします、と寄り添って掴まった。

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