第7章 住所不定 無職...かもしれない
「どうするのよ、本当に見つけてきたらっ」
「そうそう見つかる条件じゃないぜよ。
悪く無い物件じゃったら、そっちに越すかのぉ」
「...家賃、いくら位になるんだろう」
「気にすること無いぜよ。
おなごに金を払わせる甲斐性無しじゃあなか」
「出た、突然の男前」
「惚れ直しなんせ。
抜け出せんほどに惚れ尽くしとぉせ」
「『沼る男』ってこういう人のこと言うんだろうな」
ブルッ、と震え、恐ろしい、と肩を抱く。
「え?待って。
これって同棲?
交際1カ月、いや、1週間足らずで?」
「ストーカーに遭うのが目に見えちょる恋人を一人暮らしさせる男がどかんおるかぜよ」
「ストーカーって」
「違うと言えるがか?
さっき、部屋の前におった男に怯えとったが。
こわばっちょったおんしの顔が答えじゃき」
「う、」
「そげな男に惚れた昔ん自分に恥じんせぇ
んで、改めてまー君に惚れ直したらいいぜよ」
「なんだろうな。
真実を告げられているんだろうけれど、腑に落ちないこの気持ち」
うーん、と首を傾げる。
「でも、どちらにしろ職場一緒だしなぁ」
「それに関しては、早々に転職活動しなんせ」
「んな無茶な...」
「永久就職言う手もあるぜよ?」
ん、と満面の笑みで両手を広げた雅治から一歩、遠のく。
「遠慮サセテイタダキマス」
「何ノ遠慮ヲスル仲デゴザイマショウカ」
「...聞いていいですか?」
「はい、そこの受付嬢」
「どうしてそこまでしてくれるの?」
腕を組み、真っすぐに雅治の目を見つめる。
「なしてじゃと思う?」
「質問に質問で返さないで頂けますか?」
「手厳しいのぉ」
やれやれ、と言いたげに繭結の前に立つと、腰を折り、視線を合わせた雅治。
「愛しちゅうがぜよ」
ちゅ、と触れた唇は、瞬きの隙すら与えずに離れる。
「それ以外に何があるぜよ」
微笑んだ亜麻色の瞳。
「本気?」
「『本気』と書いて「マジぜよ」」
重なった声色に、雅治の目尻が下がった。
「おんし?たいがいの女に、惚れられてしもうた?が、ぜよ」
あってるのかな?と笑う繭結。
「かわえがもたいがいにしせぇ」
「かわえ、がも?」
カモ?あの川にいるカモ?と聞く繭結の髪をクシャ、と雅治の左手が撫でた。
✜