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カクテルとキャラメル・ラ・テ

第5章 生まれ変わって



戻ってきた雅治の部屋。

これ、使いなんせ、と、どこからか持ち出してきたのはハンガーラックと衣装ケース。

「繭結が使いやすいところに置くといいぜよ」
好きにしなんせ、と微笑む雅治。

「意外と、甘やかすんですね」
「俺がおらんせんと生かされんほどにしてやる気ぜよ」
「脅迫じゃないですか」


彼が運んでくれた荷物を整理すると、ローテーブルに置かれたマグカップ。
マキアートの真っ白なクレマの上には、キャラメル色のリーフ模様。
頂きます、と温かい飲み物に、ほっとする。


ソファに足を上げ、両手で持つマグカップの飲み物をふー、と冷ましている雅治。

そっ、と唇をつけると、少しカップを傾ける。

「っ」

一瞬眉を顰め、カップの中を睨んだ。


「ふふっ」
「?なんぜよ?」
「いえ、」
「砂糖、足りんようなら足しなっせ」

こく、と飲んだドリンクのキャラメルの甘み。

「ちょうどいいです」
「よかったぜよ」

ふー、ふー、と必死に冷ましている姿に(確かに猫舌っぽい)と微笑む。

「ヒトの顔見て笑うげな、失礼や奴じゃ」
「そんなんじゃないです。
 かわいいなぁ、と思って」

やっと飲める温度に冷めたらしいドリンクを飲む雅治。

「おんしの笑顔には負けるぜよ」

コト、とカップをガラス張りのローテーブルに置くと、ソファに脚を伸ばし、太腿を叩く彼。

手元のマグカップを彼のカップの隣に置き、ローテーブルとソファの間で膝立ちになる。

「わっ」

腕を引かれ、彼の腹部に覆い被さるような姿勢になる。

ぐいぐいと腕を引かれ、恐る恐る、彼の腹部辺りに跨るように乗り上げた。

片方だけにある肘置きに頭を預け、満足そうに笑いながら頬を撫でる雅治。

優しく、ゆっくりと、左右の髪を耳に掛けられる。

少し、口角が上がっている薄い唇の下の小さなホクロに触れる。

「繭結、」

唇が触れる直前に紡がれた名前に、彼を呼ぶ。

「雅治、」

さん、と言い終わる前に重なる唇。


ゆっくりと離れ、至近距離で見つめ合う。

「この瞳の色は、天然?」
バーではアイス・ブルーだった、亜麻色の瞳が収まる瞼。

「どっちじゃと思う?」
「どっちも、好き」
「100億満点の答えじゃな」

2つの熱が、狭いソファの上で一つになった。

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