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カクテルとキャラメル・ラ・テ

第5章 生まれ変わって



「どがんしたぜよ?」

チラチラと視線が落ち着かない助手席の繭結。

「いや、会社の人とかいたら、気まずいなぁなんて」
ズル休みだし、と言う。

「正常ではないのは事実じゃろ。
 身体然り、心然り」

確かに、実は少し二日酔いのような胸焼けが続いていてるけど、と悩む。

「リフレッシュ休暇言うことにしときんしゃい」
「リフレッシュ...
 ええっと、んー...雅、治、さん?マサ、さん?」
「なんじゃ、その疑問形の呼び方は」
「いえ、何と呼んだらいいのか、まだよくわかってなくて」

ふむ、とゆっくりと赤信号に車を減速させる。

「おんしは、何と呼ばれとったんじゃ」
「前の彼には、『マユ』と」
「ほんじゃったら『繭結』と呼ぶ。
 俺のことは、好きに呼んでいいぜよ」
「じゃあ...雅治さん」
「新婚さんみたいじゃ」
「えっ」

照れを隠すため、あ、赤信号、と意味無く漏らす。

「おんしは、げにまっことかぁらしぃのぉ」

ハンドルに腕と頭を預け、こちらを向いて微笑む雅治。

「今まで何人くらい女の人泣かせてきました?」
「そぉじゃのぉ...
 記憶の限りでは泣いた女を見たのは、バーで連れの男に酒をぶっかけて帰っていった人くらいじゃなぁ」
「...かけられたんですか?」
「俺は傍観しとっただけぜよ」
「女性とお付き合いの経験は、お有りですよ、ね?」
「心配せんでも、円満に握手して別れとるぜよ」
「それ、雅治さんだけの勘違いじゃないですよね?
 もしくは、女の子をその口車に乗せて無理やり納得させたわけじゃないですよね?」
「おんし、彼氏に向かってなかなか言うのぉ」

だって、と訝しんだ顔を向ける。

「まだ1割くらい、あなたの存在から疑ってます」
「それでよぉ付き合おうと決めたのぉ」
「...私なりの大冒険です」
「心配せんでも、俺は好いたおなごには素顔を晒したいタイプじゃよ」
「素顔って...え?もしかしてお化粧してます?」
「俺の素顔を見た人間は、もうこの世には存在せん...」
「整形っ!?
 実はスパイで素顔を知られたら抹消してるとかじゃないですよねっ!?」
「案外、想像力豊かじゃな」

嫌いじゃないぜよ、と雅治は笑った。
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