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カクテルとキャラメル・ラ・テ

第4章 恋人-TRICK STAR-



ドゥン、と鳴るエンジン音。

「すみません、わがままを言って」
「おなごのわがままほど可愛もんはないぜよ」
「その時折垣間出る歯の浮くようなセリフは本心ですか?」
「彼氏ば信じんしゃい」

できればまずは着替えたい、と通勤服のままだった繭結の自宅に向かうため車を出す彼は緩めのジーンズにカットソーとカーデガン。

「家はどの辺りじゃ?」

最寄り駅とその西口側、と伝えると、ナビで探し出した。

レフティだから左ハンドルの方が運転しやすいのかな、とか考えていると、この辺りかの、と目的地を設定した右手で左手を掴み、指を絡めて来た。


「行くぜよ」
「お、お願いします」

わざわざ伸ばされた左手で撫でられた髪。
向けられる視線が、まるで愛おしいものを見つめる人のそれに感じて、膝に置いた自分の手を見つめる。

その手が彼の方へと引き寄せられると、ジーンズの太腿に置かれる。
開いて置いた手をポン、と一度撫でた右手がギアを変え、車は走り出した。

 ✜

ナビ通りに走る車。

ドッドッドッと鳴る低いエンジン音が、心地よく感じる。

生活圏内に入ると、ドクドクと心音が大きくなった。

なんだろう、とみぞおちあたりを擦ると、繋ぐ手を引き寄せられ、彼の腕に肩がぶつかる。
煙草と香水が混ざった、嫌ではない男性の香りに目を閉じる。

「繭結」
「はい」

見上げた横顔は、何も言わない。

「...まーくん?」

信号で止まると、サイトウインドを開けてタバコに火をつけた。

「え、照れてる?もしかして照れてますっ!?」
「...ほっとぉせ」
「ねえ、まーくんってどこ出身なの?」
「ツベ共和国ぜよ」
「聞いたことない...ハーフなの?」
「東京に四国が入ったクォーターじゃ」
「それ、クォーターって言いますかね」
「言うたじゃろ。
 冷戦時代に捕虜になった男が...」
「そんなに遡った話だった!?」

訳わかんなくなるぅ!と悶える繭結。

「本名はマイケル・アブドェリラ・シャーロック・アリス・ヒルデッド・アリ・ラジミール・ウサヤクマラン・仁王じゃからな」

なんだって?と聞き返す。

「マイケルと、アブ、アリ...?」
「頭文字を取って『MASAHARU』じゃ」
「あ、それに漢字を...って信じるかぁっ」
「ピヨ」
「都合が悪くなると鳴く仕組みですか?」

 ✜
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