第4章 恋人-TRICK STAR-
部屋に戻ってコンビニ飯で朝食を済ませる。
「あの、仁王さん」
「ん?」
ラグに座ってくつろいでいる彼。
「本当に、お世話になりました」
「...おもしろそうじゃと勝手に首を突っ込んだだけぜよ」
「おかげさまで恋人を失った寂しさはどこかに行きました」
「おんし、寂しかったがか?」
そう問いかけられ、考えてみる。
「どう、なんで...しょうか?」
「おんしが言うたぜよ」
「いやぁ、改めて問われると、そうでもないなぁっていう」
我ながらドライだ、と驚く。
「好きじゃなかったがか?
そん男んこと」
「正直、ちょっと惰性で付き合ってたかな、って」
「長かったんか?」
「ええっと3年目ですね。
入社して割とすぐに付き合い始めたので」
「きっかけは、なんぜよ?」
「入社したての頃、研修明けでうまくお客様のご案内家できなくてフロントでパニクってたら、助けてくれて...
それから、毎朝、出社すると挨拶をしてくれるようになって、『飲みに行かない?』って誘われて
って聞いてます?」
いつの間にかラグでうつ伏せになり、腰を痛めそうな格好で寝そべっていた彼は、「...聞いとったぜよ」とどこから取り出したのか、床の継ぎ目に某社の動物フィギュアを並べて遊んでいた。
ライオン、トラなどの猛獣の列の後ろに、シマウマやキツネの草食獣とヘビなどの爬虫類、続いてネズミやウサギなどの小型動物。
(食物連鎖...)
膝から曲げた脚をブラブラさせながら、並べたフィギュアを一つずつ90度回しながら遊んでいる彼。
「あ、忘れるところじゃった」
突然に起き上がると、のそのそと向かったのは玄関。
鞄を持ってくると、取り出したのはタブレット。
床に置いて座り込むと、作業を始めた。
(掴めない人だな)
真剣そうな横顔に声を掛けずにいると、のお、とあちらから声を掛けられた。