第18章 家族
「どうぞ」
「「あ、すいません。お構いなく」」
綺麗に揃った姉弟の声に、家族だなぁ、と思う。
「こっちんが正真正銘、弟の俊雅ぜよ」
こんにちは、とさっきまで雅治の姿だった彼が言う。
「で、姉貴のちぐさ」
はーい、と言った、雅治と同じ口元にホクロがある女性が身を乗り出す。
「繭結ちゃん?
どがんして、うちらが入れ替わっとるてわかった?」
雅治の似た口調でワクワクしているようなちぐさに、いつも通りだったんだけどなー、と白銀色のカツラをくるくると回す俊雅。
「匂いと、足音ですね
タバコの香りが若干薄かったのと、足音が...しっかりしていたというか重かったと言うか。
雅治さん、少し摺り足なのか、足音が独特なんです。
滑り止めが付いているタイプの靴下とか、かかとがペタペタするサンダルとかだとわかりやすいんですけど...気が抜けると、こう、足首を揺らすように歩くんです。爪先を軽く蹴り上げるような...前後に摺ってるというよりも、足首が揺れてる感じ。
その時に、外だと靴が擦れる音が割と特徴的なんですけど、わざとらしく感じて」
「当たってるわ。
兄貴のふりする時、一番気にするの足音」
そうなん?と俊雅に聞くちぐさ。
「兄貴の歩き方って、軽いんだよな。
なんていうか...」
考え込む俊雅に、わかります、と繭結は頷く。
「月面を歩いてるような足音ですよね」
ぽーんって、と言う繭結に、そうそう!と俊雅は頷いた。
「基本的に脱力姿勢なんだよ、兄貴は。
キビキビしてないから、話す時も、力が全部下に抜ける感じの声になるんだけど、その割に足音大きくないから、重心の場所、悩むんだよね」
気にしたことなかったわぁ、と言ったちぐさが、んん、と喉を鳴らす。
「こんなじゃろ?まーくんの声」
雅治そっくりの声に、俺、そんな声かぁ?と雅治。
「んー、やっぱり、雅治さんや弟さんと比べると高く感じます」
そういう繭結に、ねぇ、と俊雅。
「ちょっと目、閉じてみて」
「?はい?」
こうですか?と目を閉じると、そのままね、と言われる。
「バナナ」「みかん」
重なった声に、即答する。
「『みかん』が雅治さんですね」
合ってますか?と目を開けると、小さく拍手をするちぐさが、すごいねー、と笑った。
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