第4章 Erode(ホークス)
そう言って、編集スタッフの所に向かいながらちらりとぱっきーを見ると、本を読んでいる……というよりも、何だろう。
どこか、思い出を整理しているような、そんな感じがした。
ふと視線を上げたぱっきーと目が合ってしまう。
すると、にっこりと微笑まれた。
その笑顔も、どこか無理しているような……今にも泣きそうな、そんな笑顔だった。
そんなんで恋に落ちる訳はないと思うが、何となく気になってしまう。
しかし、『何でそんな寂しそうなの?』といきなり聞くのも気が引ける。
不思議なコだなぁと思う位しか出来なかった。
それから、何度か仕事の打ち合わせでぱっきーと顔は合わせたが、特筆する点は特に見当たらず、仮免試験というイベントまでの仲だな、とホークスは思っていた。
どこにでもある、仕事の関係。
そう思っていた、この日までは。
仮免試験当日。
「みなさーん!一生懸命頑張ってくださいね!」
仮免試験応援団長ぱっきーの声が、試験会場に響いた。
ぱっきー効果なのか、例年よりも受験生が増えていた。
「いやー、今年は増えましたね、受験生」
目良が眠そうな目を擦りながら言った。
「ぱっきー目当てスかねぇ?」
「それは知りませんけど……まぁ、いいんじゃぁないですか?増えれば」
「……そうっスね」
程なくして、ぱっきーが関係者席に戻ってきた。
目良が、席に着くよう促した。
「今日はもう、試験見学しててもらえればいいですから」
「はい、ありがとうございました。応援団長、楽しかったです」
楽しかったという割に、やっぱり寂しそうな笑顔をするぱっきー。
何でそんなに寂しそうなのか、気になって仕方ない。
しかし、人に触れられたくない事の1つや2つ、人間ならあるだろう。
ホークスも、またそうだ。
昔の事を思い出したりすると、眠れない日が偶にある。
頭に手を置かれるのも嫌いだ。
父親の暴力を、思い出してしまうから。
うん、あるある。
ぱっきーだって、触れられたくない事位、あるでしょ。
聞かないで、あげよ。
気になる心に蓋をして、ホークスは言った。
「試験終わったら、パッと打ち上げでもしませんか?目良さん」
「あぁ……いいんじゃぁないんですか」