第4章 Erode(ホークス)
「ぱっきーは、来れそうスか?」
「あ、今日はもう、仕事なくって」
「じゃあ、決まり!常闇くんも、来るんだよ?」
「……御意」
この打ち上げが、ホークスの運命を変えるとはこの時誰も予想していなかった。
そして、仮免試験も無事に終わった夜の居酒屋。
「いやぁ、無事終わってよかったスわ。常闇くんも、ありがとね」
「師の頼みとあれば」
打ち上げは、酒の席でもあるので他の若いスタッフなんかは酒を飲んで盛り上がっていた。
「あれ、ホークスさん、飲めないんですか?」
隣の席に座っていたぱっきーに言われて、ホークスはソフトドリンクの入ったグラスから口を離した。
「あー……」
昔の癖だった。
ヒーローとして、いつでも現場に行けるように現役の時はアルコールを飲んだ事はなかった。
今も、飲めるかどうか定かではない。
そもそも、アルコールを飲むという概念が存在しなかった。
「飲んだ事、ないんス」
「そうなんですか……何か、意外ですね」
意外……?
「美味いんスかね、酒って」
「まぁ……適度に飲めば、ですけど」
そう言って、ホークスの前にグラスを置いたぱっきー。
グラスの中身は、琥珀色のハイボール。
「これ、頼んだばっかでまだ口付けてないので……よかったら」
1杯くらいなら……いっか。
そう思って、ハイボールの入ったグラスを口に付けた。
それが、間違いだった。
1時間後。
「……っうー……」
何だか盛り上がる周りに流されて、グイグイいってしまったホークスは酔っていた。
「ダメだ……俺もぅ、だめなんら……」
グズグズとテーブルに突っ伏して泣く、公安委員会会長。
そう、意外にもホークスは泣き上戸だった。
しかも、さめざめ泣くタイプの。
「あの……ご、ごめんなさい、私が勧めたから、こんな事に……」
「もう、ダメなんだ……お酒も、飲めないし……個性もないし……もう、だめなん……グスッ」
「あぁもう、ダメじゃないですよ、大丈夫ですよぉ」
これまた意外にも、ぱっきーは酔っぱらいの介抱が上手かった。
優しく窘めながら、背中をよしよしとさすっている。
「目良さん、ホントにごめんなさい、私……」
「いやぁ……僕も知りませんでした……」