第3章 ナチュラルスキンシップ(爆豪勝己)
放課後。
意外と律儀な勝己は、相澤に言われた通り教室で1人反省文をしたためていた。
クッソ、何でこの俺がこんな事……
「あれ、爆豪くん、まだ居たの?」
もうとっくに帰ったと思っていた繭莉が、教室に入ってきた。
「っせぇな、てめぇはさっさと帰れブス!」
「相澤先生に怒られてたもんねぇ?授業中に、何考えてたの?」
「何も考えてねぇよ!さっきから何なんだテメェ、潰されてぇんか!」
「やだ、こっわ!」
あははと笑う繭莉の右手は、勝己の肩に置かれていた。
マジで、何なんだコイツ。
ベタベタベタベタ……
例の男共とも、こんな感じなんか?
「テメェ、馬鹿にすんじゃぁねェよ!」
「別に、馬鹿にしてないって」
繭莉が、急に真面目な顔をした。
肩から、手が離れる。
「馬鹿にしてない。爆豪くん」
心臓の音が、ドクドクとやけにうるさくなる。
「……この意味、分かる……?」
「は?」
いや、分かんねぇし。
何言ってんだコイツ。
「テメェ、何言っ」
勝己はその後の言葉が、出なかった。
繭莉に、キスされていたから。
何だ!?この状況は!
漫画みてぇなトンデモ展開じゃねぇか!
回らない頭で必死に状況の整理を試みるが、上手くいかない。
座っていた椅子が、がたんと音を立てた。
兎に角、キスされているというのは事実なのである。
やろうと思えば突き飛ばせる筈なのに、出来なかった。
繭莉の唇の感触が、温かくて気持ち良くてもっとして欲しいとか、思ってしまう。
けれど、触れるだけのキスはすぐに終わってしまった。
「……じゃあ、」
繭莉が、くるりと背を向けた。
その手を、勝己は気付けば掴んでいた。
「どういうつもりだよ」
いや、俺の方がどういうつもりだよ!
「どうって……うん……?」
うん?って何だよ、オイ。
「爆豪くんって、ニブい感じ?」
「はぁ?」
「ねぇ、授業中、何考えてたの?」
何だよ。
お前の事、考えてたって言やいいのか?
……言えっかよ!
「だから何も考えてねぇ!ざっけんな!」
「……じゃあ、今も何も考えないで……」
気付けば、視界は天井を向いていた。