第3章 ナチュラルスキンシップ(爆豪勝己)
「あぁ?」
「昨日、見たんだって!甘井が、スーツ着た男と歩いてんの!」
アイツが……男……
「なぁ、やっぱ彼氏とか?」
「俺が知っか、馬鹿じゃねぇのか!」
勝己がまぁまぁな声量で言ったので、他の男子達がわらわらと寄ってきた。
「あ!上鳴、オイラも見たぞ!甘井が男と歩いてんの!でも、学ラン着てたなぁ……」
と、峰田。
「そうなん?俺が見たのは3年の奴だったけど」
と、瀬呂。
「俺も見たぜ、他校の男と歩いてんの」
ダメ押しで、切島。
男子達は、顔を見合わせた。
「どういう事だ?」
「お、俺が知るかよ!本人に聞けって!」
これは、マジで何なんな状況である。
「パシリでもさせてんじゃぁねぇのか?」
勝己が適当な事を言うと、男子達はさらに盛り上がった。
「ばっ、中学生じゃねえんだから!」
「何か、親密ぅな感じだったぜ?」
「甘井って、あれだよな。何かすげーナチュラルに、触って来るし……彼氏の1人や2人、いてもおかしくなくね?」
「やっぱ甘井って、そういう奴なん?」
そう言った瀬呂が、勝己の方を見る。
つられて他の男子も、勝己に熱い視線を注いだ。
何で俺の方見んだよ、知らねぇよ。
「くっだんねぇ!散れ!」
髪の毛一筋すら興味がないふりをして、勝己はしっしと男子達を追い払った。
しかし、勝己の脳内は大渋滞を起こしていた。
あの陰キャ隠れヤンキーに、男……しかも、4人も。
クソきめぇな、何だアイツ。
昔は、ブン殴る対象だったろ、男なんざ。
それが、親密な?
……。
変わりすぎだろ、あの女。
あ?
何で俺がアイツの事、考えなきゃなんねぇんだよ。
キッショ!止めだ、止め止め。
勝己が無理矢理考えるのを止めた所で、授業開始のチャイムが鳴った。
しかし、考えないようにしようと思っても考えてしまう。
男と歩いて、何すんだ?大体。
何って、何……ナニ……
っあー!あんだよ、あのクソビッチが!
「おい、爆豪」
相澤の冷たい声で、我に返った。
「っあ?」
「あ?じゃない。授業聞いてなかっただろ、お前。後で反省文でも書いとけ」
……。
マジかよ。
ざっけんな、アイツの所為だ!