第3章 ナチュラルスキンシップ(爆豪勝己)
そのくせ喧嘩が馬鹿強かった。
自分から喧嘩を売るわけではないが、売られた喧嘩は片っ端から買っていた気がする。
あの当時、中学生相手に大立ち回りを演じていたのを見た事もある。
そして、自分の口元に飛んだ相手の返り血をペロリと舐めていた。
一言で言うと、ヤベぇ奴。
そう思っていたので、自分から話しかける事すらしなかったのを思い出した。
そうか、あの甘井繭莉か。
それにしても……
勝己は視線を耳郎や寄ってきた八百万なんかと談笑する繭莉に移した。
時間は人を変える、ってか?
変わりすぎだろ……気付かんかった。
「あ、えっとー爆豪くん、だっけ?」
突然名前を呼ばれて我に返った。
繭莉が、いつの間にか目の前にいたのだ。
「ちょっとそこ通るからどいてね、ごめんね~」
そう言いながら、勝己の両肩に両手を置く繭莉。
つい、勝己は繭莉に言われた通り右に身体をずらしていた。
何事も無かったように、繭莉は教室を出て行った。
「……は……」
何だ、アイツ。
何気安く触っとんだ。
どいてほしいなら、口で言やあいいだろ……あ、言ったか。
つうか、アイツも俺の事覚えとらんのか?
……。
何か……腹立つ……!
これが、恋の始まりだという事を、勝己はまだ知らなかった。
雄英に入学してから暫くして気付いた事がある。
そのナチュラルなスキンシップと結構な可愛さとコミュ力で、繭莉はそこそこモテていた。
どこぞの誰かが彼女に告白したとかいう噂を聞いて、勝己は思った。
あんな奴、どこがいいんだ?
つうかアイツに告った奴は知らんのか。
アイツが、ただのヤベぇ奴だっつーのを。
ホントは陰キャの隠れヤンキーだって言いふらしたら、今のアイツしか知らん奴らもアイツ本人もどう思うんだろうな。
俺には全く持って関係無ぇから言う気も更々、起きんけど。
「なぁなぁ爆豪、聞いてくれよ」
何か最近よく話しかけてくる上鳴電気が、性懲りもなく勝己に話しかけてきた。
「ンだぁ、アホ面」
「あのさ、昨日俺、見ちゃったんだよ」
「あぁ?知らねぇよクソが!」
「いや、まだ言ってねーから!あのさ、甘井なんだけど……」