第3章 ナチュラルスキンシップ(爆豪勝己)
爆豪勝己に、彼女はいない。
彼女はおろか、女友達もいない。
そもそも女が寄って来ない。
それは、本人もお気づきだと思うが乱暴な言動が女を悉く遠ざけるのだ。
しかし、そんな彼にも好きな女の1人や2人位いるだろう。
これは、爆豪勝己という男の恋愛事情をちょっと盗み見た話である。
雄英入学初日。
「じゃあ、1人ずつ自己紹介でもしといてくれ」
担任の相澤消太の一声で、自己紹介をする羽目になった生徒達。
くっだんね。
高校生にもなって、自己紹介かよ……だりぃな。
勝己は、頬杖をついて自己紹介をする生徒達をぼんやりと眺めていた。
「甘井繭莉です、趣味は音楽!よろしくお願いしまーす」
何とも軽い自己紹介。
ん?
甘井……繭莉……
甘井?
何か、聞き覚えがあんな。
いやでもあんな奴、知らねーし。
顔はまぁまぁ、身体は……ホントにヒーロー志望かァ?細すぎてへし折ってやりたくなんな。
まぁそれは、置いといてだ。
甘井、甘井……
…………。
ンだよ、全っ然わっかんね!
俺が覚えてねェっつう事は、ただのモブだろ。
モブモブ、モブ決定だな。
はよこの時間、終われや。
甘井繭莉という女子の総評を終えた勝己は、真面目に自己紹介している飯田をバカかコイツ的な目で眺めていた。
休み時間。
「ねぇ甘井、音楽好きってホント?」
耳郎響香が、甘井繭莉に話しかけているのを見かけた。
「あ、耳郎さんだっけ!うん、好き!耳郎さんも好きなの?何聴く?」
「ウチは何でも聴くよ!甘井は?」
「私も何でも!あ、けどね、私昔音楽教室通ってたからバンド系めっちゃ聴くかも!」
あ?
音楽教室だぁ?
甘井、音楽……教室……
あ。
アイツか!甘井繭莉!
勝己はついに思い出した。
甘井繭莉とは、小さい頃音楽教室で一緒になった事がある。
しかしだ。
彼女は、人と談笑するような軽~い女ではなかった。
いつも、教室の隅でぼんやり頬杖をついてるタイプ。