第15章 本当はね(ホークス)
「私の恋はこれからだから!大丈夫、多分……」
お母さんは、私の方を睨むように見た。
「本当に?あんた、ニブいもんねぇ……色々」
「……はぁ……?」
それは、どういう事なんだろうか?
誰かに好かれてるとか、そういう事?
「ま、いいわぁ。本当の自分の気持ち、大事にしなさいね。あんたはまだ、修正効くんだから」
私の……気持ち……かぁ……
そう思った所で脳裏に蘇ったのは、あの日の帰り際に見た優し気な鷹見の顔だった。
「えっ!?」
私が素っ頓狂な声を上げたので、お母さんがビックリした表情をした。
「な、何よぉあんた……いきなり大きな声出して」
「いっ、いや……」
な、なんで?
どうして鷹見?
え、待って……私、もしかして……鷹見の事……
自分の事ながら、いきなり突きつけられた事実に慌ててしまう。
何故、今の今まで自分の気持ちに気付かなかったのだろうか。
鷹見が好きだという、自分の気持ちに。
それで、新しい恋だなんだと浮かれて今日を迎えたのだから目も当てられない。
「……お母さん……なんか、ありがと……」
私が素直に謝意を伝えると、お母さんは一瞬不思議そうな表情をしたけれどすぐに笑顔になった。
「いいわよ、別に」
「お母さん、どんな人とデートすんの?」
お母さんの新しい恋人候補はどんな人なのだろうという純粋な疑問から、そう聞いていた。
「はは、冗談よ、デートは!弁護士さんに会うだけ」
「……そ、そうなんだ……」
なんだぁ……びっくりしたよ、デートとか言うからさぁ……
「ま、今度またあんたの近況聞かせて!じゃあね」
そう言うとお母さんはこちらに歩いて来た弁護士と思われるお兄さんの元に歩いて行ってしまった。
弁護士か……ホントに離婚すんだな、お母さん達……
そんな事を思いながら、遠ざかっていく後ろ姿を眺めていると後ろから「甘井さん」と声をかけられた。
「すみません!お待たせしてしまいましたか?」
振り向くと、少し息を上げた上村さんがいた。
きっと、待ち合わせ場所に先に私がいたから急いで駆け寄って来てくれたんだろう。優しい人だ。
「あの、上村さん」
「あ、はい!」
「……ごめんなさい、私……帰ります」
自分の気持ちに気付いてしまったのだから、嘘を吐いて誰かとデートをするなんてとてもじゃないけど出来なかった。
