第16章 Drastic medicine(緑谷出久 ホークス)
それから、一週間後。
「緑谷、話がある。時間いいか?」
相澤先生に話しかけられて、僕は小テストの採点をしていた手を止めた。
「はい……相澤先生、どうしたんですか?」
「甘井なんだが……来月、士傑に転校する事が決まった」
「え……っ……?」
転校?
そんな、急に……!
繭莉からは、そんな話は1つも聞いていなかった。
でもそれは、僕が彼女を少し避けていたからかもしれない。
「もしかして、それって……」
僕の所為……で……?
赤ペンを持つ手が、ブルブルと震えた。
それを見たからなのか、相澤先生が僕の肩にポンと手を置いた。
「いや、お前の所為じゃない。単純に、親の転勤の事情だそうだ」
「そう、ですか……」
相澤先生はそう言うけど、どこか腑に落ちない。
もしかしたら、繭莉のどこかに地雷が埋まっていて、僕はそれをうっかり踏んでしまったのかもしれない。
それか、僕とはもう顔を合わせたくない何かがあるか。
マイナスな事なんて、いくらでも思い浮かんでしまう。
「そんな顔すんな緑谷。しかし俺はてっきりもう、甘井から聞いてるのかと思ったぞ」
「…………」
「まぁ、あれだ。転校の日まで、しっかりケアしてやれ」
僕は、無言で頷くしか出来なかった。
放課後。
僕は、最近避けて通っていたあの空き教室のドアを開けた。
「……あ……」
そこには、窓の桟に頬杖をついて外を見ている繭莉がいた。
僕の心臓は、少しうるさく音を立て始めた。
「繭莉」
名前を呼ぶと、その声に反応して振り返った彼女は「先生」と言って微笑んだ。
「緑谷先生、最近来てくれないから寂しかった」
「来てたら、何話してた?」
「え」
繭莉が、大きな目を更に大きく見開いた。
「士傑に転校する事?それとも……」
どうしても、拭いきれない嫉妬心が僕に続きを言わせた。
「本当は、ホークスが好きだって事?」
驚いた表情の繭莉が、後ずさりをした。
「先生、なんでそんな事……」
「転校するのは事実でしょ?」
「そう、だけど……」
繭莉の背中が、壁にトンと当たった。
「ホークスが好きなのも、事実でしょ?」
「そんな……私、は……」