第15章 本当はね(ホークス)
そして、今日はやっと退院の日。
「……はぁ……」
退院手続きを終えた私は、駅に向かうバスを待っていた。
なんか……ちょっと濃い入院生活だったな。
まさか、他の入院患者とあんな事になるなんて……
あっ!しまったあぁ!
鷹見の事、思い出しちゃったぁ!
あの日から、なるべく鷹見の事は思い出さないようにしていた。
だって、思い出してしまったら連絡が来ない事をどうしてだろうとか、まるで彼女にでもなった気分で考えてしまいそうだったから。
彼もきっと、気の迷いで私を抱いたんだろう。
音沙汰がないのが、いい証拠だ。
「も、忘れよ……」
「何を忘れるんですか?」
独り言に返事をされて、私は思わず後ろを振り返った。
「甘井さん、退院おめでとうございます」
振り返った先には、上村さんが立っていた。
「あ、え、上村さん!?どうしたんですか?」
「僕、夜勤終わったんで帰ろうと思ったら甘井さんが先にバス待ちしてたので……驚かせてしまって、すみません」
「そ、そうでしたか……」
私がビックリしながらそう答えると、上村さんは少し顔を赤らめてこちらを見つめてきた。
「あの、甘井さん」
「は、はい?」
「えっと……今度、僕と出かけませんか?」
「えっ!?」
で、出かけ……
そいつはもしや……デートってやつでは……
そう思った時、脳裏に何故か鷹見のあの最後に見た顔が浮かんでしまった。
はっ!?
なんで今、鷹見なんか思い出すんだ!?
なしなし、今のなし……
「あの、はい……私でよければ……」
思い出してしまった鷹見の顔をかき消すように私は答えた。
「本当ですか!?じゃあ連絡先教えてください、休みの日連絡
しますので!」
そう言って上村さんがスマホをポケットから取り出したので、私も鞄からスマホを出した。
「僕、マジで嬉しいです」
と、上村さんはさわやかな笑顔で言った。
いや、私も嬉しいよ上村さん。
とりあえず、マッチングアプリ登録はちょっと延期しよう……
こんな感じで自然に恋って、始まるもんだよね!
そうだ、そんなもんだ。
あんな、ワケの分からない昼下がりの過ちは忘れよ……うん。
そんな事を思いながら、交換したての上村さんの連絡先が浮かんだスマホの画面を眺めていた。