第15章 本当はね(ホークス)
鷹見という男は、ただの軽い遊び人ではなさそうだ。
真面目を軽さでコーティングした、繊細な人間なんだろう。
……多分……
「わ、私、自分の部屋戻るんで……」
そう言いつつ部屋を出ようとすると、「繭莉さん」と鷹見に呼び止められた。
「え?」
私が振り向くと、鷹見は何か言いたそうな表情をした。
「どうしたの?鷹見」
何を言いたいのか気になってそう尋ねると、一瞬少し考える素振りを見せた後、またいつものヘラヘラした笑顔を作った。
「気を付けて帰って下さいね」
「……うん……?」
なんだろ……?
絶対、なんか言おうとしてた……
鷹見って、不思議なヤツ……
この時の私は、これから自分がその不思議な男……鷹見に振り回される羽目になるなんて夢にも思っていなかった。
入院3日目の夜。
「じゃあ、新しい点滴入れますね。消灯の後、見回りに来た時にまた確認しますから。……腕、痛い所ないですか?」
「はぁ……なんとか、大丈夫です……」
看護師さんが去った後、ベッドに寝転がってぽたぽたと落ちていく点滴をなんとなく眺めていた。
……はぁ……
いつになったら、この1日中点滴地獄終わんのかな……?
っつーかお腹空いた……
あ……退院したら仕事探さなきゃ。
ついでに出会いもないしマッチングアプリも登録しといた方がいいかな?
あぁ……あと親のイザコザをなんとかしなきゃなぁ……
……ヤバい……
お腹、痛くなっちゃうわ……考えてたら。
ちょっと、廊下でも歩いてリフレッシュしよ。
「よっと」
ベッドから降りると、遠藤さんが「どうしたの?甘井さん」と心配して声をかけてくれた。
「あ、大丈夫です!ちょっと散歩してくるんで……消灯までには戻ります」
そう言い残して、点滴スタンドを引っ張りながら私は病室を後にした。
「あれ?繭莉さん」
廊下で後ろから声をかけられて振り向くと、スマホを片手に持った鷹見が立っていた。
スマホ……電話でもしてたのかな?
誰と……あ……もしや……
「なぁに~鷹見、カノジョに電話でもしてたの?」
「そんなのいませんって」
冷やかしに真顔で冷静に対応されて、少し恥ずかしくなった。
「繭莉さんこそ、何してんですか?」
「……散歩……?」