第14章 可哀想な2人(相澤消太)
「……はぁ……」
唇を離すと、繭莉は少し名残惜しそうな表情で消太を見上げてきた。
その可愛さといったら、もう凶器に匹敵するかもしれない。
そんな凶器に致命傷を負わされるのも時間の問題だ。
自分の欲望に流されてしまった消太は繭莉の腕を掴むと、教師寮の中へずんずんと入って行った。
繭莉は、消太の意図に気付いているのかいないのか何も言わずに腕を引っ張られるままついて来た。
自室のドアを開けると、そこに繭莉を放り込んでガチャンと鍵を閉める。
放り込まれた方の繭莉は、どうすればいいのか分からないといった様子で棒立ちになっていた。
「……相澤さん、えっと……わっ!」
戸惑う彼女の肩をトンと押せば、簡単に後ろにあったベッドの上に尻もちをつく。
「いたた……っ!」
逃げられないように繭莉の上に覆い被さると、服の中にするりと手を差し入れた。
「……あっ……」
その表情が、これから起こりそうな甘い出来事に期待してとろりと蕩けかける。
「……っ、あ、相澤さん……」
そんな顔すんなよ、ヤバいから。
おい、ヤバいって何だよ……
……
いや、そのまんまだろ……
……可愛くて、ヤバい……
我ながらチョロい思考回路だと思いつつ、ブラジャーのホックに手を伸ばした。
その時だった。
「っ!」
消太のポケットの中で、スマホが震えた。
……誰だよ、こんな時に……
無視しようとも思ったが、しつこく震え続けるスマホ。
「……あいざわさん……?」
消太のポケットの中の事情を知らない繭莉は不思議そうな表情をしている。
「……」
渋々繭莉から手を離してポケットに手を突っ込んでスマホを手に取ると、着信画面を確認してギョッとした。
……おい、どういう事だ……
どういう事もどういう事、電話をかけてきていたのは数日前に自分をあっさり振った元彼女だったのだ。
どういうつもりだ?
今更なんの用だっつうんだ。
……仕方ない……
「なんの用だ」
手短に話を済ませようと敢えて事務的な口調で電話に出ると、電話の向こう側でなにやらすすり泣く声が聞こえた。
『消太……ごめんなさい』
涙声とその言葉で消太は、うっすら相手が何を言いたいのか分かってしまっていた。
『私やっぱり、消太じゃないとだめなの……』