第14章 可哀想な2人(相澤消太)
俺は翔太じゃない。
コイツは翔太に言ってるんであって俺に言ってる訳じゃない。
なんで、こう……
「……いいだろ、もう」
とんでもなく複雑な気持ちになった消太は、繭莉に台本を突っ返した。
「ええっ!?まだ全然進んでません、おにいさん!もうちょっと!」
しつこく食い下がってくるのを無視して歩き出すと、丁度部活帰りの生徒達と鉢合わせしてしまう。
「あ、相澤先生さよーならぁ!」
「なんですかぁ、相澤先生ってば掃除のお姉さんと仲良さげ!」
挨拶ついでにそんな事を言われて若干気まずい。
「部活終わったんなら早く帰れ」
「はぁい、じゃあね先生!」
きゃっきゃとはしゃぎながら帰っていく生徒達を眺める消太を、驚きの眼差しで見つめる繭莉。
「あいざわせんせい……え……おにいさん、先生だったんですか?」
「……今までお前は俺が何だと思ってたんだ」
今までの状況からして言わなくても察すれば自分が教師である事位分かる気がしていたので腹が立ってそう言った。
すると、申し訳なさそうに繭莉は箒の柄をつんつんと弄り始めた。
「や、あのぅ……すいません、えっと……」
「お前は相澤先生とか呼ぶなよ?」
ちょっと睨みをきかすと、繭莉はびくっと身体を跳ね上がらせてそれまで弄っていた箒の柄をぎゅっと握りしめた。
「っあの、すいません、相澤さん!」
……
相澤さん……
そう呼ばれて悪い気もしない。
なんだか気恥ずかしくなって、今度こそ彼女に背を向けた。
が、背を向けた先には何故か根津校長がちょんと立っていたのだ。
「やぁ相澤くん、甘井さん!仲が良さそうで何よりなのさ!」
仲良くねーよ。
と咄嗟に思ったが、この学校の長にそんなツッコミを入れるのもどうかと思うので黙っておくと、根津は繭莉の元へトコトコと歩いて行った。
「甘井さん、残業代はずむから教師寮の廊下を掃除して欲しいのさ!」
『残業代をはずむ』の魅惑の言葉に魅せられた様子の繭莉は、恐れも知らずに世界的偉人、根津をひょいっと抱き上げた。
「ホントですかぁ根津校長!もちろんやります!早速行きましょ!場所どこですか?」
「降ろして欲しいのさ、甘井さん。場所は、相澤くんに教えて貰ってくれないかな?」
また俺かよ……