第14章 可哀想な2人(相澤消太)
「やあ、甘井さんだね?待っていたのさ!」
いつの間にか校門の入り口に根津校長がちょんと立っていた。
雄英のセキュリティは部外者が入れないよう厳しい。
だから、ここで根津校長は繭莉を待っていたんだろうと消太は思った。
根津は、頭の天辺から爪先までふんふんと彼女を見ると「合格なのさ!」と暢気な発言をした。
なんだ……?顔面審査なのか?このバイトは……
消太が疑問に思っていると、根津に「相澤くん」と話を振られて若干嫌な予感がした。
「君達、知り合いなのかい?」
「いや、そういう訳では……」
ない、と言いかけた所で根津に話を遮られる。
「じゃあ、軽く彼女に校内を案内してあげて欲しいのさ!終わったら職員室に来るように……頼んだよ」
それだけ言い残して、根津はトコトコと歩いて行ってしまった。
厄介な事を押し付けられたと思いつつ、根津校長の命令では仕方ないと諦めた。
「行くぞ」
「あ、はい!」
2人は並んで校門をくぐった。
消太の後を早足でついていきながら、繭莉は「なるほど……」と何がなるほどなのかよく分からない発言をした。
「なにがだよ」
「いや、あの、結構葉っぱ落ちてるなぁと思いまして……外の葉っぱを掃除して欲しいって、勤務内容に書いてあったんで」
この、外の落ち葉掃除するだけで4万円……?
なんつう高給取りだよ。
根津の金銭感覚をちょっと疑いながら校内をざっと案内して回った。
職員室に戻る頃には、昨日から色々ありすぎてどっと疲れが押し寄せてきた。
自分の椅子に腰掛けると、大きな溜息が零れた。
「……はぁ……」
「あら、相澤くん。朝から溜息?昨日、そんなに疲れちゃったの?」
丁度、後ろを通りがかったミッドナイトにツッコまれる。
「それとも、あの彼女と何かあった?一緒に学校来てたって、いうじゃない?」
ミッドナイトは職員室の隅の方で根津から何やら話を聞いている繭莉をちらりと見ると、どこか楽しそうに消太に言った。
「何もありませんよ」
がっつりあった癖に、嘘を吐いた。
「そうなの?……ふぅん?」
どこか含んだような言い方をしてミッドナイトは職員室を出て行った。
これからどうなるんだ?俺……
さっさと振られた事を忘れて繭莉に沼ればいいのに、消太は後生大事にそんな事を考えていた。