第14章 可哀想な2人(相澤消太)
繭莉の部屋は、まぁなんとも簡素だった。
テーブル、クッション、ベッド。
とにかく、女の部屋と思えない程物が少なかった。
「あの、座って待っててください」
そう言われたので、取り敢えずテーブルの前に座ってみる。
ケーキ食ったら、さっさと帰ろう。
そう思いながら待っていると、繭莉が冷蔵庫から持ってきたケーキをテーブルの上に置いた。
「……どうぞ」
目の前に置かれたケーキを見て、消太はギョッとした。
それもそうだ、そのケーキは明らかに5号はあろうかと思われる程大きいホールケーキだった。
これを、2人で……?
なんのフードファイトなんだ……一体……
呆然とする消太に構わず、ケーキを包丁で切る事もしないままフォークでぶっ刺して口へと運び出した繭莉。
「今日、広夢くんの誕生日だったんですぅ……」
広夢?
ああ……例の詐欺師の元彼氏の事か……?
「だからつい、買っちゃったっていうか……もう、ここに来ないのなんて、分かってるんですけど……うっ……」
つらつらと話しながら、また彼女は泣き始めた。
「お金もないし、仕事もないし、彼氏もいなくなっちゃって……っ……私、これからどうすれば……」
そして、またテーブルに突っ伏す。
消太は、適当にケーキの上の苺をフォークで刺して口に入れながらしゃくりあげる繭莉の背中をさすった。
この手のタイプはいくら何を言って励ましてもきっとどうにもならない。
いっそ、落ちる所まで落ちてしまった方が浮上も早い。気がする。
そう思って、あえて何も言わなかった。
そうして泣きたいだけ泣かせておいてどれ位経っただろうか。
少し落ち着いたのか繭莉がズッと鼻を啜りながら言った。
「すみません、初対面のおにいさんにこんな……」
「いや」
もう、付き合いすぎてさっさと帰ろうと思っていたのを忘れていた。
ついでに言うと、酔いが急に回ってきて立つのが正直しんどかった。
「……」
消太は、テーブルの上のケーキをちらりと見た。
ケーキ……まだ残ってるし、帰らん理由にはなるだろ。
もう少し居させて貰って、酔いが醒めたら帰ろう。
そう思いながらふと繭莉を見ると、泣き疲れたのか何なのか、テーブルに突っ伏して……眠っていた。
ね、寝やがった……!