第14章 可哀想な2人(相澤消太)
そうは思ったが、目の前の可哀想な好みの顔をほったらかしてさっさと帰るのも気が引ける。
消太は、酔っていて正常な判断が出来ていなかった。
「……分かった」
つい、そう返事をしていた。
「よかったぁ、ありがとうございますぅお兄さん!ほら繭莉、送ってってくれるって!帰んな!」
陽菜に肩を叩かれて顔を上げた繭莉が、消太の方を見てきた。
潤んだ瞳の好みの顔に見つめられて、悪い気はしない。
「……おにーさぁん……!」
繭莉がまたぐずぐずと泣き始めた。
消太は溜息を吐いて彼女の腕を引いて椅子から立たせる。
「行くぞ、家どこだ」
この選択もまた、よくなかった。
ぐずぐずふらふらする繭莉の腰に手を回して、やれそこを真っ直ぐとかそこを曲がれとかを途切れ途切れに指示されながら彼女の家を目指して歩く。
その間も、ずっとすすり泣く声が聞こえてこれは傍から見たら自分が泣かせているのではと思われるんじゃないかと微妙な気持ちになった。
これだから、酔っぱらいは困る。
自分も酔っぱらいなのを棚に上げて暫く歩いていると、繭莉の足が止まった。
目の前には、ちょっと古めかしいアパート。
「着きましたぁ……」
そう言うと、突然その場に座り込んだのでまさかコイツ吐くんじゃないだろうなと戦慄が走る。
「あの……おにいさん」
座り込んだまま、繭莉が消太を見上げてきた。
可愛……いや、なんで今それだ……違うだろ……
つい、心の中で自分にツッコミを入れてしまった。
「お願いが、あるんですけど……」
初対面の男にお願いしたい事なんて、何なんだろうか。
「一緒に、ケーキ食べて下さい……っ……ぐす……」
「……はぁ……?」
消太は、意外なお願いに拍子抜けした。
ケーキ……
飲みの締めに、ケーキ。
ヘビーだろ……それに、なんでケーキ?
そうは思ったが、もうここまで付き合ってしまったのだから仕方ない。
もう会う事も多分ないし、最初で最後のお願いだろうと思ってその話を飲むことにした。
「さっさと食うぞ、俺はもう帰りたいんだ」
消太の言葉に、ぱぁっと顔を明るくする繭莉。
好みの顔にそんな表情をされて、調子が狂ってしまう。
そんな消太には全く気付かずに繭莉は家のドアを開けた。