第14章 可哀想な2人(相澤消太)
……いや、好みっつっても、顔面だけだ、顔面だけ……何とも思わん。
しかし、その好みの顔面がじっと自分を見つめてくるのでどうしたもんかと思ってしまう。
ほいほい次に行ける訳ないだろ……たったさっきだぞ、フラれたの……
「おにいさん、可哀想……」
話を聞く限り自分を軽く凌駕する不幸女、繭莉がぽつりと言った。
可哀想……
いや、そっちだろ、可哀想なのは。
「もう、飲んで下さい……陽菜、おかわり……」
消太は、酔っているのに酒を求める繭莉を止める気にもならなかった。
なんとなく、飲みたい気持ちは分かる。
飲んで飲んで何もかも忘れてしまった方がいいのでは、とすら思った。
「繭莉、そんな飲んだら帰れなくなるよ?……まぁ、しょうがないかぁ……すいませーん、ハイボール2つくださーい!」
陽菜が追加を頼んだというのに我慢も出来ないのだろうか、繭莉は目の前にあった誰の飲んだものかも分からなくなったグラスに口を付けた。
「いいもん……どうせ帰ったって、大家さんに家賃払えって怒られ……怒ら……グスッ」
なんだか、目の前の好みの顔の女がマジで哀れに思えてきた。
でも慰めの言葉をかけるのも何か違うと思ってしまって、その代わりといってはなんだが消太も運ばれてきた酒を運ばれてきただけ飲んだ。
それが、いけなかった。
30分後。
「……私、どうしよう……」
1人だけいい感じに正気を保っていた陽菜が明らかに困っていた。
「ヤな事あったからって、2人とも酔いすぎ!もぉ……繭莉は何とかなるけど……」
「俺は酔ってない」
消太は自信満々でそう言い放つが、したたかに酔っていた。
「お兄さん絶対酔ってるでしょ!もうどうにもならないから、解散!すみませーん、お会計お願いしまーす!」
店員を呼ぶ陽菜に、繭莉が泣きながら縋った。
「待って陽菜、私帰りたくない……あんな家帰ったって……なんも……ぐす……うぅっ」
「……うーん……」
どうすればいいのか考えあぐねた陽菜が、突然何かを思いついたようだ。
「お兄さん!」と消太の両肩をガシっと掴んだ。
「繭莉の事、家まで送ってってくださいよ!酔ってないって言うなら!」
「……は……?」
なんで、俺が……?