第13章 推しと好き(爆豪勝己)
「甘井お前、何やってんだ」
ざっぴーがカフェのテイクアウトの紙袋を持ってこちらに歩いてくる。
「ざっぴー!このヒトと別れた方がいい!」
私は、かなり失礼だけどお姉さんを指差してそう言った。
「……はぁ?」
ざっぴーは、眉間に皺を寄せた。
そんなのには構わずに、彼の両腕を掴んでガクガクと揺さぶる。
「目ぇ覚ましてざっぴー!こんなヒトにハマったらね、いつかボロ雑巾みたいな捨てられ方するよ!ダメ!絶対!」
「何言ってんだ、お前が気に入らないだけだろ」
冷静にツッコまれたけど、気に入る気に入らないじゃない。
推しがヘンなオンナに掴まって、後々悲しむ所なんて見たくないじゃん。
だから、不安の芽は今ここで摘まないと。
「もっといい人いるって絶対!取り敢えずこのヒトはやめとこ!ね!?」
「はいはい、分かったよ」
ざっぴーは、私の肩をポンポンと軽く叩いた。
「考えとくからお前はもう寮帰れ、もうすぐテストだろ。勉強しろ」
その行動と言葉で私は全てを察した。
コイツ、絶対考えてねぇな。
……
もう、いい!
私は、ちゃんとやめた方がいいって言ったもん。
これでざっぴーがどんなに不幸な目に遭おうがもう、私の知った事じゃない。
後で、後悔してさめざめ泣いたらいいんだ!
「もう、知らないから!」
ちょっとした捨て台詞を残して、私はその場から走り去った。
私が、寮に戻ったのはもう昼過ぎだった。
走った事による疲労感と、さっきの一件で募ったどうしようもない苛立ちがMAXに達していた。
今、何かあったら私は確実に爆発する。
そんな、感じだった。
寮のドアを開けると、丁度何処かへ行こうとしていたんだうか、爆豪くんが立っていた。
めんどいヤツに、会っちまった。
そう思いながら、無言で彼の横を通り過ぎようとした。
「ンだぁ、お前。どういう感情のツラだ、それ」
予想外に話しかけられて、私は顔を上げて爆豪くんを見た。
とても、驚いた顔をしていた。
「爆豪くんこそ、それどういう顔……?」
何故か、自分の声が震えていた。
あれ?
なんで私、こんな泣いてるみたいな声、してるんだろう?
「何、泣いとんだ」
そう言われて、自分の頬を涙が伝っている事に気付いた。