第2章 ゆめのプロポーズ(轟焦凍)
「教えてくんねえか?」
「……え……」
「この気持ちが、何なのか」
お互いの名前を知ったのは、その後だった。
それから、私達が恋人同士になるまで時間は掛からなかった。
「好きだ、繭莉」
いつだったかそう言ったあの頃の焦凍、可愛かったなぁ。
そうだ、初めてセックスした日の事も、覚えてる。
あの日はそう、日曜日。
日曜日はお店が休みだから、昼間から堂々とデートできた。
朝、鏡の前で何を着ようなんて迷う事、もう何年もしてなかった。
お酒の匂い、抜けてるかな……
なんて、何かが起きる事を期待するのも、久しぶりだった。
「焦凍、お待たせ」
私の声に振り返った焦凍は、不思議そうな顔をした。
「いつもと、感じが違ぇ」
「なぁに、キャバ嬢だってたまにはカジュアルな服も着るんですぅ」
「……似合ってんな」
照れ臭そうにそう言った焦凍の顔が、好きだった。
こうして昼に会ってる時だけ、私は楽しくて心から笑えている気がした。
隠してもいずれバレると思ったので、焦凍にはキャバ嬢であることは打ち明けていた。
でも、焦凍はこんな私を受け入れてくれたのだ。
「そんなの、関係ねぇよ」
そう、言って。
夕方になると、焦凍は帰ってしまう。
そう、思っていた私は焦凍に我儘を言った。
「もう少し、一緒に居たいな……」
明日の夜には、私はまた男の前で飲んで飲んで飲んで楽しくもないのに笑う。
せめて、今だけはそんな事は考えたくなかった。
「俺もそう、思ってた」
一瞬、息をするのを忘れた。
「もう少し、繭莉と、居てぇ」
私は、自分のマンションに焦凍を連れて行った。
これから何が起きるか、何となく察しはついていた。
「繭莉……いいか」
「……うん……好きよ、焦凍」
「俺も、すげぇ好きだ」
甘い期待に、胸が高鳴った。
お互いに服を脱がせ合って、裸になった時焦凍が少し恥ずかしそうな顔をしたの、あれ、ホント年相応の男のコって感じだったな。
「触って、いいか」
今までの誰とも違う、たどたどしいけど私を壊れ物みたいに扱う優しい愛撫がただただ気持ち良かった。
「あ、っ、しょう、と……っ、キス、キスして……っ」