第12章 ゆめのプロポーズ2(相澤消太)
「……はい……」
私が頷くと、保健の先生はゆっくり話し始めた。
「本当に、危なかったけど……あなたの叫び声を、前を偶々通った部活中の子達が聞いてね……顧問の先生に言ってくれたのよ。……それで、助ける事が出来たの」
「じゃあ、私……」
先生は、にっこりと微笑んだ。
「大丈夫、何もされてないわよ」
……よかった……
そう思ったら緊張の糸が切れたのか、涙が出てきてしまった。
「……っう……」
「もうすぐお兄さん、来てくれるから。……それまでに、泣き止みましょうね」
背中をポンポンと叩かれながら、私はほっとしたのとこれからどうすればいいのかという不安な気持ちが入り混じってひとしきり泣いてしまった。
「繭莉、大丈夫か?」
迎えに来てくれたお兄ちゃんが、車のエンジンをかけながら言った。
「……うん……なんとか……」
「そっか……こんな時に丁度いいって言うのも、変な話なんだけどさ」
お兄ちゃんは少し、言いづらそうに話し始めた。
「俺、東京の店舗に異動になったんだ。だから、一緒に来ないか?高校は……こんな事あって、行きたくなきゃ通信制で資格だけ取ってもいい」
赤信号で、車が停まった。
「……どう?」
お兄ちゃんが、私の顔を覗き込んだ。
東京、かぁ……
紗綾とか、友達にも会えなくなる……
けど、もしかしたら……この、どうしようもないつらさからは解放されるかもしれない。
「分かった、お兄ちゃんと一緒に行くよ」
私は、そう言って頷いた。
そして、2か月後。
引っ越しは意外と早く決まって、私は家の前で紗綾に泣きつかれていた。
「繭莉ー!寂しいよおぉぉ!」
「だ、大丈夫だよ紗綾……絶対、連絡するし一生の別れじゃないんだから……」
「ホント!?絶対だよ!?東京の色に染まんないでね!?絶対私の所に帰って来て!」
……それ、何かの懐メロみたい……
「ありがと、紗綾。大好き!」
私が紗綾に抱きつくと、ぎゅうっと身体をホールドされた。
「うわぁぁん繭莉っ、私は愛してる!」
……はは……そっかぁ……
「繭莉、そろそろ」
お兄ちゃんが車から顔を出したので、私は最後の我儘と思って言った。
「ちょっと、ここら辺一回りしてきていい?」