第12章 ゆめのプロポーズ2(相澤消太)
それから、1か月。
私は、麻倉先生の中に相澤さんを探した。
同じ男なんだから、もしかしたら似た所があるかもしれないと思った。
けれど、それは大きな間違いだった。
私を抱きしめる腕は、冷たかった。
「好きだよ、繭莉」
そう言って笑って私の頭を撫でる手は、優しさというか何というか……どこか下心を感じてしまって、嫌だった。
似た所なんて、ひとつも見つからなかった。
全く赤の他人なんだから当たり前なんだけど、本当に欠片も見つからなくて、絶望した。
「先生……私と、別れて下さい」
誰も居ない放課後の進路指導室。
私は、ついに耐えきれなくなって先生に別れを切り出した。
「……何となく、分かってた」
先生は、意外と察しのいい男だったみたいだ。
「繭莉の心は、最初から俺には向いてなかったもんな。……分かってた……分かってて、付き合ってた」
がたんと音を立てて、先生が椅子から立ち上がった。
「最後に、頼みがあるんだ」
両肩をぐっと掴まれて、私は何か嫌な事が起こりそうな予感がしてぞくりと肌が粟立った。
「繭莉、思い出が欲しい」
それって……やっぱり……そういう事……!?
「い、いや……離して!」
「お願いだ繭莉!それで、終わりにするから!」
「やだ、やめて!だ、誰か!誰か!」
私は先生の手を振り切って、入り口のドアをドンドンと叩いた。
「繭莉!」
私は、先生に勢いよく身体を壁に押し付けられた。
その時、頭を壁にぶつけてしまったらしい。
「っ!……う……っ……」
そこから、私の記憶はなかった。
「……ん……」
次に目を覚ました時に見えたのは、知らない天井だった。
ここ、どこ?
身体を起こそうとすると、頭に鈍い痛みが走った。
「甘井さん!いきなり起き上がっちゃダメよ」
そう言って、私の身体を支えたのは学校の保健の先生だった。
「……先生、ここは……?」
「病院よ……辛い思いをしたわね、甘井さん」
辛い思い……?
もしかして、あのまま私あの人に……!
私がさぁっと青ざめると、保健の先生は背中をさすってくれた。
「心配しないで、大丈夫よ。……お話、聞けるかしら?」