第12章 ゆめのプロポーズ2(相澤消太)
相澤さんの指は、温かかった。
その温かさが、つらかった。
「……やめて、ください……」
やっとの事で、喉の奥から言葉が出た。
「優しく、しないで……私……っ……」
相澤さんの手が、そっと離れた。
「相澤さんの事が……好きなんです……」
折角涙を拭って貰ったのに、また涙が頬を伝った。
相澤さんは、私の告白をただ黙って聞いていた。
「私の事、好きじゃないなら……突き放して欲しい……」
好きじゃないなら優しくされるより突き放された方が、幾らかマシだ。
その方が、この恋を忘れて新しくまた歩き出せる。
そう思ったけど、どうやらそれは叶わなさそうだった。
優しい手が、私の頭を撫でた。
「……なんで……」
「……早く、帰んなさい」
相澤さんはそれだけ言うと、私の頭から手を離して自分の部屋に入ってしまった。
パタンと閉じたドアの音が、やけに耳に残った。
……どうして……?
どうして、優しくするの?
私は、このどうしようもないつらい思いから解放されたいだけなのに。
どうして、つらいままで居させたいの?
もう、何もかもが……分からない。
私は、どうしようもなくなってその場から逃げるように立ち去った。
次の日。
「繭莉ー、麻倉先生が呼んでるよぉ」
教室の入り口から、友達が大きめの声で私を呼んだ。
「分かったぁ、今行く!」
そう言ったけど、正直行きたくなかった。
どうせ、昨日の事でしょ?
私は、自分の事をすっかり棚に上げて、自分勝手な麻倉先生を軽蔑していた。
先生の後をついていくと、空き教室の前で足が止まった。
「……入って」
私は、素直にその言葉に従った。
中に入った瞬間、先生に後ろから抱きすくめられる。
「ごめん、繭莉!」
先生の身体は、どこか冷たかった。
「昨日、あんな風にするつもりじゃ、なかった」
言い訳されて、私の冷めきった心は更に冷めた。
「別れたいとか、言わないでくれ……お願いだから」
私は、嫌気がさした。
「……私の方こそ、昨日はごめんなさい」
けれど、口では全く違う事を言っていた。
「これから大事にしてくれたら、それでいいです」
真っ赤な嘘だった。
もう、全てがどうでもよくなっていた。