第11章 スターと恋(轟焦凍)
「そうなのか」
やっぱ、知らねぇの俺だけか……?
そう思った所で相澤が教室に入って来た。
「席着け、ホームルーム始めるぞ」
その言葉で生徒達は自分の席に着いた。
焦凍も、スマホの電源を落とすと鞄にそれを仕舞った。
放課後。
駅のホームで電車待ちをしていた焦凍は、ふと繭莉の歌を聴いてみようと思い立った。
スマホを取り出し、音楽アプリを開く。
甘井、繭莉……
取り敢えず、最新曲を聴いてみる事にした。
イヤホンを耳に入れると、アップテンポなイントロが流れてくる。
程なくして聴こえた繭莉の歌声は、心地よかった。
しかし明るい曲調とは裏腹に、歌詞は絶望的な程の失恋を描いたものだった。
きっと、そんなちょっとしたミスマッチ感が人の心をくすぐるのかもしれないと焦凍は思った。
電車がまだ来なさそうなので、もう1曲聴いてみようと思ったその時だった。
焦凍の前を、人が横切った。
綺麗な横顔で通り過ぎた、自分よりも少し年上と思われる女の子。
背中にはギターケースを背負っている。
その姿は、今まさに聴いていた歌声の主だった。
「……繭莉」
思わず、口から名前が零れていた。
それに気付いたのか、こちらを振り向いた繭莉が焦凍に近づいて来た。
「ねぇ、今私の名前呼んだの、キミかな?」
「あ……はい」
呼んでしまったことに変わりはないので、片耳だけイヤホンを外しながら素直に頷いた。
「やー、こんなイケメンに認知されてるなんて、嬉しいなぁ」
ストレートにイケメンと言われて、どう返していいか分からずにいると、焦凍を見上げる繭莉がにこっと笑った。
「キミ、名前は?」
「……焦凍」
聞かれるまま自分の名前を答えると、彼女は「んー」と口元に手を当てて何かを考えるような仕草を見せる。
「……なんかさぁ……」
「?」
「しょーとって……電気ショックみたいな名前だね」
で……電気ショック……?
今まで、名前に関してそんな表現をされた事が無かった。
スターダムにのし上がった人間の考える事は、どこか自分達とは違うんだろうかと焦凍は思ってしまった。
繭莉は不思議な女の子……というのが素直な印象だった。