第9章 事情聴取(相澤消太)
さっきまでの不安はどこへやら、すっかりエリちゃんにメロってしまう。
「久しぶり、エリちゃん!」
エリちゃんの頭をよしよしすると、どこかくすぐったそうにしながら笑顔を作ってくれた。
はあぁ、可愛い……!
「今日は、伸びた分切ろっか!」
「……うん……」
よし、そうと決まれば。
「緑谷くん、何か椅子とか……あったりするかな?」
「あ、ありますよ!僕、持って来ます」
緑谷くんは、ぱたぱたと共有リビングの方へ歩いて行った。
「ああ~!相澤先生のカノジョ!」
いつの間にか現れたピンクの子が、私を見つけるなりこちらに駆け寄ってきた。
そうだ、彼女なんはバレてんだ。
「色々恋バナ聞きたい~!相澤先生、居ないっぽいし今日こそ色々聞くんだから!」
……結局、そうなるんか……
「……お名前、聞いてもいいかな?」
いつまでもピンクの子じゃ申し訳ないのでそう尋ねると、「芦戸です!」と元気よく名乗ってくれた後、その場にいた全員の子の名前を順番に教えてくれた。
1人1人の名前を頭にインプットしていく。
名前と顔、すぐ覚えられんのは美容師の特技だもんね。
「ありがと、芦戸さん」
「それより、どーやって相澤先生と知り合ったの?気になる!」
今日もどこまでも透明な葉隠さんが寄ってきた。
「え、えっと……」
「お話し中すみません、甘井さん、これでいいですか?」
「あ!ありがとう」
緑谷くんが椅子を持って来てくれたので、エリちゃんにそこに座るよう促した。
ちょんっと座るその姿もまた可愛すぎる。
「そうだなぁ……どこから話せば……」
エリちゃんの髪を触りながら、消太と初めて会った時の事を思い出していた。
えーっと、あれは……3年前、だったかな?
「じゃあ繭莉ちゃん、あとはお店、頼むね!」
「はい!お子さん、お大事にして下さい」
「ホント、急に熱出しちゃうなんて困るよねぇ。子供だからしょうがないけど!じゃ、よろしく!」
「お疲れ様でした、お気をつけて!」
店長の子供が急に熱を出したとかで、私は閉店まで1人で居る事になった。
レジ横のパソコンを覗いて、今日のこの後の予約をチェックする。
すると、さっきまで入っていなかった予約がポツンと1件、入っていた。
えっと、名前は……?